7/19/2024

SMM (4)サービス企業の論点 ⑤組織文化と競争優位iii 文化と組織特性2つのアプローチ(上)

組織文化は競争優位の源泉になっているか?」の3回目です。

1回目は、組織文化の定義と3つのレベル

2回目は、組織文化の形成要素と顧客サービス


差別化に基づいた競争優位の構築により、高業績を挙げたサービス企業にはどのような組織文化の特徴があるのでしょうか。これを考える時、私たちは、1980年代に大ベストセラーとなった『エクセレント・カンパニー』を思い出さずにはいられません。マッキンゼーのトム・ピーターズとロバート・ウォーターマンは、超優良企業の共通項を次のように記しました。

1. 行動重視

2. 顧客に密着

3. 自主性と企業家精神

4. 人を通じての生産性向上

5. 価値観に基づく実践

6. 基軸から離れない

7. 単純な組織・小さな本社

8. 厳しさとゆるやかさの両面を同時にもつ


ビジネスのソフト面に焦点を当てた『エクセレント・カンパニー』は大変な反響を呼び、大いなる賞賛と、少なからぬ批判を浴びました。批判の幾つかは、次のようなものです。1982年に発表されたこのビジネス書の中で超優良企業とされた会社が、その後も引き続き超優良企業であり続けたわけではないとか、 超優良企業の組織文化や価値観に関して簡単な事例を載せているだけで、考察を体系的には行っていないといったものです。

超優良企業になるためのこれらの条件は、おそらく今日でも通用するものと思いますが、ただ、超優良企業であり続けるためには、8つの条件が必ずしも揃っていなくてもよいのではと思えるため、この点は注意が必要です。 


ピーターズとウォーターマンは、同書で、企業が信奉する2~3つくらいの価値観が、経営トップから組織のボトムラインにいる従業員まで浸透し、包括的な信念が形成されている状態を、強い文化と呼びました。  

強い文化とは、リーダーの行動が、コミュニケーションをとおして、配下にいるスタッフのコミットメントをとりつけ、組織を望む方向に導いていくことを可能にするもの、と筆者は考えます。 

ただ、これまでの組織文化研究における強い文化と高業績の関係は、フィリップ・コトラーとジェームス・ヘスケットの研究を含め、短期間であったり、一定の条件が揃えば成立する条件付きのものであったりというように、相関関係が希薄か、不十分なものと解釈されてきました。従って、組織文化と高業績の関係を「強い文化」に求めるのは、条件付きではありえますが、一般的にいえば少々無理があるというのが、このアプローチ(強度アプローチ)に対する学術上の研究結果です。それでは、組織文化の内容・タイプから考えるのはどうでしょうか。 


組織文化を類型化した研究(類型化アプローチ)で最もよく知られているのは、キムS.キャメロンとロバートE.クインによる競合価値観フレームワーク(CVF/Competing Values Framework)でしょう。CVFは、組織の有効性を判断する指標を分析し、2つの次元と4つのクラスターに分類しています。2つの次元とは「柔軟性・裁量権・独立性安定性・統制」と組織内部に注目する傾向と調和組織外部に注目する傾向と差別化」、4つのクラスターとは官僚文化・マーケット文化・ 家族文化・イノベーション文化、とキャメロンとクインの『組織文化を変える』に記載されています。

官僚文化は、英語原文でヒエラルキー/Hierarchyといいます。このタイプは、安定性と統制を重視、組織内部に注目する傾向と調和志向が強いとされています。 

官僚文化と同じように安定性と統制を重視しているものの、組織外部に注目する傾向と差別化志向が強いタイプが、マーケット文化(マーケット/Market)です。 

柔軟性と裁量権・独立性を重視し、組織内部に注目する傾向と調和志向が強いタイプが、家族文化(クラン/Clan)です。今日の日本企業は少し違うかもしれませんが、20世紀、特に1980年代頃までの日本によく見られたタイプといえるでしょう。

柔軟性と裁量権・独立性を重視し、組織外部に注目する傾向と差別化志向が強いタイプが、イノベーション文化(アドホクラシー/Adhocracy)です。アドホクラシーとは、時々の状況に合わせて柔軟に対応する姿勢またはそのような主義と言われており、和訳のイノベーションとはニュアンスがだいぶ異なります。

このまま続けると長くなっていきますので、続きは次回とさせていただきます。

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