今回は「組織文化は競争優位の源泉になっているか?」の4回目(組織文化と競争優位iv)で、前回の組織文化と組織特性2つのアプローチ(上)の続きになります。これまでの内容については、以下をご覧ください。
ii: 組織文化の形成要素と顧客サービス
iii: 組織文化と組織特性2つのアプローチ(上)
キャメロンとクインの『組織文化を変える』では、4つの文化の特性とその代表的な企業が述べられています。 有能なリーダーの定義を①、組織が重視するものを②、組織を結束させるものを③、代表例として挙げられた企業を④として、少し大胆かもしれませんが、思いきってまとめると、次のようになります。
官僚文化/ヒエラルキー:
①組織における調整能力(但し、ルールの監督者といったニュアンスが強い)
②組織を維持すること、計画遵守と業務の効率性
③明確な規則と方針
④マグドナルド
マーケット文化/マーケット:
①競争優位獲得のための他組織との取引
②高い収益性、高い目標
③競争優位と生産性
④フィリップス、GE
家族文化/クラン:
①チームワークをファシリテーションする役割
②チームワーク、事業活動に対する社員の深い関わり方、社員に対する企業のコミットメント、顧客は第一のパートナー、人間味のある職場環境の構築
③同じ価値観、信念、目標
④ピープルエクスプレス航空
イノベーション文化/アドホクラシー:
①専門知識、柔軟性
②革新的な製品/サービスの創出
③個人の尊重、リスクテイキング、未来予想
④コンサルティング会社、NASA
キャメロンとクインの競合価値観フレームワークをとおして、異なる組織文化の特性やイメージなどを、少し掴んで頂けたのではないかと思います。また、4つのタイプそれぞれに対して、該当するサービス企業を頭に浮かべた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここで我々が気をつけなければいけないことは、基本的に、組織文化には良い・悪いというのはないということです。CVF(競合価値観フレームワーク、Competing Values Framework)に基づいた4つのタイプでいえば、たとえば福祉サービスを提供する企業Aの組織文化は家族文化/クランだから良くて、企業Bの組織文化が仮にマーケット文化/マーケットだからといって良くないということはない、ということです。
そのサービス企業が提供するサービスの特性によって、適不適というのはあるかもしれませんが、あまり適していないように見える組織文化であったとしても、それが提供するサービスの内容にふさわしくないからといって、無理やり変えることがあってはなりません。会社の現在の業績がたとえ芳しくない状態にあったとしても、拙速に組織文化を変えようとすると、その会社は崩壊しかねません。
仮に、経営トップが思い描いている理想の組織文化と、現状に大きな乖離がある時は、その原因を分析して、組織文化を変えていくことが望まれますが、その場合は、慎重に対処しなければいけません。とはいえ、トップの思う理想像と自身の言行不一致などがあることは珍しくないでしょう。
たとえば、顧客フレンドリーな態度で顧客に接することを経営陣が求めているにも関わらず、その経営陣は顧客と従業員に到底フレンドリーとはいえない言動で接しているといったものです。業績の伸び悩みや社内のぎくしゃくした関係などは、トップのこういった態度や行動が原因になっていることもあるため、より注意が必要です。
前大阪府立大学の北居教授は『学習を促す組織文化』のなかで、競合価値観フレームワークを含む5つの代表的な類型化モデルのレビューをとおして、高い成果をもたらす組織文化の共通特性を4つ挙げています。
(1)外部志向の文化が、良好な成果をもたらしている。
(2)目標達成を強調する文化が、良好な成果をもたらしている。
(3)内部の柔軟性を強調する文化は、従業員のモラルを向上させる。
(4)内部の安定性を志向する文化は、有効ではない。
(1)と(2)については、日常をとおして、推察できるところがあるかと思いますが、(3)と(4)については少し意外に思われる方がいらっしゃるかもしれません。
次回は、組織文化を変えるものについて考えたいと思います。