7/01/2024

SMM (4)サービス企業の論点 ④組織的なコミュニケーション

前回のSMMブログでは、サービス企業における大きな5つの論点の三つめ「サービスデリバリのギャップは何か?」について述べました。今回は、四つめの組織的なコミュニケーションについて考えたいと思います

はじめに、サービス企業のコミュニケーションを、何故、SMM(サービスマーケティングマネジメント)の大きな論点として取り上げたのかというと、それはマーケティングという組織こそが、企業内部のあらゆる組織と接点を持つからであり、且つ社外に対してはマーケティングコミュニケーションという役割を担っているからです。

論点①5つの大論点と顧客期待の理解でも述べましたが、サービス活動全体の良し悪しは、サービス品質で決まります。サービス活動全体を俯瞰できる業務を担っている組織が、マーケティングです。というのもマーケティングは、顧客の行動を観察し、顧客ニーズを踏まえたサービスコンセプトを策定して、現場でそれを擦り合わせ、マーケティングミックスを練り、サービスを利用した顧客の満足度を評価して、フィードバックする。こういったサービス活動全般に関係する組織が、マーケティングだからです。


さて、わたしたちはもう何年、何十年もの間、戦略が重要だ、ブルーオーシャンを見つけろなどといわれ続けてきました。ですが、そう簡単にブルーオーシャンを見つけることなどできないとわかり、かといって何もしないわけにもいかないので、結局は他社がやっていることを単に真似たり、コスト削減に走るといったことを繰り返してきたといえるでしょう。そして、ここに至っては、空前の物価高と企業への賃上げ要請で、大企業ならまだしも、大半の中堅中小企業の経営は、ますます容易ならざるものになっています。ものづくり企業もそうですが、多くのサービス企業は尚更厳しさを増しているように感じます。 

サービス企業こそ、現場が全てです。企業が提供するサービスには、無形性、同時性、異質性、消滅性、顧客との共同生産といった特性ゆえ(SMM(3)サービスの特性①同サービスの特性②)、このように断定できるでしょう。

本社、本部で策定した事業戦略を、現場で実行して、企業の狙いやゴールを実現させていく。戦略とはゴールを達成するために、競争優位を発揮できるものを整合的に束ねた打ち手のまとまりのことで、謂わばゴール達成のための仮説の束ともいえます。

仮説は、検証してはじめて、その良否や有効性がわかります。サービス企業の場合は、サービス5つの特性ゆえに、現場での仮説検証と、その後の本社・本部へのフィードバックが必要不可欠です。仮説に間違いがあれば、それを正し、次は精度の高い仮説が立てられるようにしていく、そういうことを繰り返し続けることが必要です。フィードバックを円滑に行うためには、コミュニケーションを継続的に皆が行うこと、仕組みとして、つまり組織的に行うことが何より重要です。さもなくば、サービス企業の場合は、戦略は絵に描いた餅となり、使えないものになってしまいます。


コミュニケーションを組織的に行っているか?

コミュニケーションを組織的に行っていない企業は多数存在します。一人ひとりの従業員はいい人であっても、同じ組織内で、Aさんは顧客の期待と満足をしっかり把握し、上長や本部へフィードバックを適切に行っているのに対し、Bさんはそういったことが殆どできていないとか、M組織は経営トップのビジョンやメッセージ、方針を共有して速やかに実行しているにも関わらず、N組織は情報共有や伝達が不十分というのは、よくあることです。 日本人ばかりの現場でも、こういったことは珍しくありません。ましてや、いろいろな外国から来ている人がいる現場では尚更のことです。

コミュニケーションが停滞したり、組織的なコミュニケーションができない理由には、以下のような4つのものが考えられます。それぞれにおいて、よくある現象を併せて記述します。

省察の場の不足(現場) 

職場での悩みを上司や同僚に相談できず、ひとりで抱え込む。 

上司との対話は成立せず、一方的な指示や伝達に終始する傾向が高い。 

部下の意見や改善提案などは軽視され、検討過程は不透明なまま、YesかNoの回答があるだけ。

業務支援の場の不足 (現場と本社/本部)

会社全体の方向や各支社/支店/営業所/施設内での事案に関する情報が伝達されない。たとえば、成功/不成功といったケースは共有されず、同じような現象が各現場で発生している。 

業務実態などに対する現場と本社/本部との認識のズレが大きく、調整機能も不在のまま(そもそも本社/本部が業務や課題などを詳細に把握していない)。

仕組みづくりの場の不足(本社/本部) 

会社全体の戦略が明確とはいえず、業務支援の場も不足しているため、結果的に本社/本部内の経営陣や執行役員、スタッフは具体的なアクションに落せない状況が発生している。 

そもそも仕組みづくりは、現場主導、或いは現場単体で行うべきものと本部/本社が考えている。

多様な出会いの場の不足(現場間) 

自身の業務やごく近しい職域についてのみしか情報を得ることができず、同僚や他組織のタスクや業務全般の情報に接する機会が殆どない。 

新たな発想や気づきを得る機会が乏しく、時代の空気や世の中の感覚とのズレが生じている。

  

こういった問題は、一朝一夕に解決することは無理ですが、時間をかけて体系立てて組織的に取り組めば、必ず解決することができます。

対外的には、どうでしょうか。サービス企業のマーケティングは、顧客に対して自社が果たす約束を提示します。それは、ホームページ、プレスリリースや広告宣伝、自社と仲介企業の営業パーソン、自社施設内のカタログやパンフレットなどをとおして行われます。口頭や文字などの視覚によるワンウェイコミュニケーションは、顧客の期待を高めることにつながります。 

顧客に示した約束と、顧客が抱く期待との間で不一致が起これば、 問題が発生します。こういった問題は、上述のものに加えて、不明瞭なサービスコンセプトや、十分に整っていないサービスデリバリ・システムに起因します。 

従業員と顧客、従業員同士、従業員と経営陣、そういった人と人との関係、人と人の間の相互作用を円滑にするには、その「場」におけるコミュニケーションが鍵となることは明白です。

企業はゴーイングコンサーン、これを前提にすれば、企業のコミュニケーションは組織的に行うことが必要です。コミュニケーションを組織的に行うためには、プロセスを中心とした場の目に見えない仕組みを構築すること、そしてそれを回し続けながら、仕組みの精度を上げていくことに尽きるといえるでしょう。

 

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