4/20/2024

SMM (3)サービスの特性 ②異質性、消滅性、顧客との共同生産

前回は、サービスの無形性と同時性について述べました。今回は、異質性、消滅性、顧客との共同生産についてです。

サービスの異質性とは、サービスの品質がいつも同じではなく、差異が生じることを意味しています。サービスは、提供する従業員、顧客、サービスが提供される場所や時間などの要件次第で、差異が生じるリスクがある、というか大半のサービス業では、差異が生じてしまいがちです。

異質性が生じる要因には、様々なものが挙げられます。但し、サービスプロセスが整備されていないとか、サービスの物理的環境が衛生的に問題があるといったようなことは、サービス提供以前の問題のため、こういった類いのものを外せば、異質性の主な要因には、次の3点が挙げられます。

サービス提供者が人間である以上、精神的、肉体的に、毎日同じように行動するというのは難しいと思います。ミスをすることもあるでしょうし、少し不機嫌な気持ちで仕事に向かうこともあるでしょう。人間はロボットではないからです。また、人間には個性、性格の違いがあるから尚更です。レストランでも、高級になればなるほど、スタッフの違いが目立つように思います。同じ職務についていても、まったく同じように、たとえば、感じがいいということはありえないでしょう。スタッフに対して基本的なトレーニングが終了しているレストランで、そこのマネージャーができることは、スタッフ全員の振舞いを良い方向に持っていけるように、環境を整備することことくらいしかできないかもしれません。

ふたつめに、サービス提供者以上に多様な顧客が、異質性の主たる要因です。顧客の性格、顧客のその日の気分に加え、顧客の言動が別の顧客の行動に影響を与える場合があることなどから、顧客は異質性の主たる要因となります。

様々な外的環境もサービスの異質性をもたらす大きな要因になります。天候が商業施設の入場者数に影響を与えることはよくあることです。その商業施設内で、行列ができる店とできない店では、商品の売れ行きに影響がでるでしょう。小売店舗であれば、行列ができる店は繁盛している証明にもなるため、更なる行列をよびます。一方、銀行などで行列ができる窓口やATMなどでは、客足が遠のくかもしれません。このように、外的環境が、顧客の受けるサービスに大きな違いを生じさせます。こういった外的環境を、サービス企業が自らコントロールすることは容易ではありません。

サービスの異質性を極力なくし、品質の均一化をはかるためのひとつの策として、サービスの工業化、IT化、ロボットやAIによる代替などがあります。実際に、ロボットをフロントに導入しているホテルがあります。食品スーパーやコンビニでも近々で珍しくなくなることでしょう。自動運転によるタクシーも登場しつつあります。いずれ、医師や看護師なども、人手不足の解消や人件費の削減などの観点から、ロボットなどに代替されていくことになるかもしれません。


サービスの消滅性については、生産と消費が同時に行われるため、生産するそばから消滅していきます。サービスが無形であるということは、物と違って、在庫ができません。これが消滅性といわれている所以です。生産されたサービスや生産準備にあるサービスは、消費されなければ成立せず、価値を生みません。生産されたサービスの分かりやすい例は、空席がある状態で運行する飛行機が挙げられるでしょう。生産準備にあるサービスであれば、たとえばランチタイムに、(当初の期待や予想と異なり)お客が入らないレストランなどが挙げられます。このように、消滅性は、サービス企業に需給調整を強いることになります。


顧客との共同生産については、サービスの種類と特性①サービスの定義と4つのカテゴリー②有形の行為③無形の行為によって異なります。人を対象にするサービスは総じてサービスの同時性が高く、そこでの顧客の役割が大きい場合は、顧客との共同生産の特性をさらに強めていきます。レストランで注文を尋ねられたら答えるとか、支払いを要求されたら直ちに精算するといったものであれば、顧客は最小限の役割しか果たしません。

ですが、顧客の役割が大きくなるケース、たとえば医療・福祉の場合などは、その典型といえるでしょう。顧客が積極的にサービス生産に参加しなければ、事態の改善や相手による状況把握・診断といったものは難しくなります。

顧客がサービス生産に関与する度合いが高まれば高まるほど、顧客はサービスプロセスに影響を与える可能性が高まります。顧客が正しく関与せず、サービス生産がうまくいかないこともあるのを想定すれば、サービス企業は、顧客を顧客としてみるのではなく、サービスのプロセスとアウトプットにおける品質と生産性を左右する部分的な従業員と捉える必要があるのかもしれません。部分的従業員であれば、顧客としての存在以上に、もっと積極的に教育をしていくことができるでしょうし、また、それが必要ともいえます。

たとえば、顧客に対して、はじめに果たすべき役割とタスクを説明しながら、具体例をケースで明示する。次に、サービス生産の過程において、役割とタスクを理解して実行できているかを確認しながら、状況に合わせて叱咤激励する。その後、顧客のパフォーマンスを評価し、フィードバックを与えながら、モチベーションの維持・向上に努める。最後に、パフォーマンスが良好であれば継続してサービスを生産・消費し、悪ければサービスの共同生産をとりやめ、やめて頂くといった具合です。

多くのサービス企業で、ある程度そういったことはやっている感はあると思いますが、もっとそれを強めていってよいというか、強めていくべきでしょう。相手の常識や良識に期待するといった思考や行動は、もはや通用しないと考えるべきです。ほかのちゃんとやっている顧客や、サービススタッフに迷惑をかけるというような生易しいものでなく、損失や損害を与えることにつながるからです。

そもそも一番最初に、サービス企業が共同生産について顧客に説明し、仮に顧客が必要な役割を正確に理解できないとか、タスクを実行しそうにもない場合、そういった部分的従業員については、はじめから採用しないというのが正しいやり方です。つまり、マーケティングは、予めサービスの共同生産ができそうな自社にとって潜在的に質が良い顧客を探していくことに資源を集中させることが、すべき重要なことになってくることになります。


ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目

ターゲティングは、はじめにセグメントした市場を評価し、次に 自社が競争に勝てそうなセグメント、或いは攻めるに値するセグメントを特定するというステップで進めます。 セグメントを評価する項目には、以下のようなものが挙げられます。 市場要因  (セグメントの規模、セグメントの成長率、価...