4/08/2024

SMM (2)サービスの構成要素 ②4つの要素

前回のSMMブログでは、サービスの構成要素に関する考え方を述べました。今回は、その4つの要素(サービスプロダクト、モノプロダクト、サービスデリバリ、サービス環境)について、以下に概説します。


サービスプロダクト

サービス提供に関わるもの全て(ひとつのトータルパッケージ)のうち、中核をなすものがサービスプロダクトで、まさにサービスの部分にあたります。サービスプロダクトとは、サービス提供者があらかじめ計画した一連の活動のことを指します。一連の活動とは、顧客が必要とする結果を、顧客に提供できるようにするためのものです。

たとえば、有形の行為で人の体を対象にするサービスでは(サービスの種類と特性 ①サービスの定義と4つのカテゴリーサービスの種類と特性 ②有形の行為)、旅客輸送の場合は乗客を安全で定刻どおりに運ぶこと、要介護者を対象にした高齢者施設であれば入所者が不自由さを感じることなく日常の暮らしができることといったものが該当します。有形の行為で有形資産である物を対象にするサービス、たとえば衣服のクリーニングであれば、汚れを落とし白くきれいに仕上げる活動全体となります。つまり、有形・無形を問わず、顧客が望む結果を提供するための計画された全ての要素ということができます。

ところで、旅客輸送では安全と時間以外にも、快適性が重視されることも多いはずです。この場合、旅客輸送では安全性と遅延なく移動することをコアサービスと位置づけ、快適性や利便性といったものは補完的サービスとして捉えるのが一般的でしょう(サービスの構成要素 ①コアサービスと補完的サービス)。但し、コアサービスに属さないものは全て、補完的サービスになるわけではありません。私たちはサービスを認識する時に、以下にあるような3つの要素、モノプロダクト、サービスデリバリ、サービス環境にも関心を払います。

なお、サービスには、モノと異なり、際立った特徴があり、無形性、同時性、異質性、消滅性、顧客との共同生産といったものが挙げられます。これらの特性については、次回のSMMブログ「(3)サービスの特性」で、述べていくことにします。


モノプロダクト

ひとつのトータルパッケージのなかで、顧客に提示される物的な要素のことをいいます。たとえば、小売業などは分かりやすいでしょう。購入する衣服や雑貨、食品といったモノそのものが該当します。レストランであれば、料理そのものになります。 小売業でモノを購入する場合、モノに関する説明を受けたり、購入後の包装、時には自宅への配送、場合によってはアフターサービスが必要になるかもしれません。このように、消費活動には、モノのみを購入するということは意外と少ないものです。サービスについても、レストランの料理や教育機関のテキスト等々、サービスとモノの組み合わせで成立していることが大半を占めているといえるでしょう。


サービスデリバリ

顧客が実際に経験するサービス活動のことを指します。サービスプロダクトと混同しそうですが、サービスプロダクトとは上述のとおり、計画または予定されたものを指します。サービスデリバリは、計画や予定ではなく、実際に経験する活動のことを表します。  

サービスデリバリをサービスの構成要素に加える理由は、サービスの特徴である無形性、同時性、異質性、消滅性、顧客との共同生産といったものに起因します。たとえば、サービスは作り置き、在庫をもつことができず、生産自体が同時に行われます。

ものづくりの場合であれば、計画したとおりに工場などの現場で、機械的に、または化学的に生産されるのが普通であるため、誤差は発生するものの、通常は計画値と実績値にそれほど大きな乖離は発生しないのがふつうです。また、万が一、間違いが発生した時には、その場で生産ラインを止めて点検をしたり、配送途上にあるものを回収することもできます。 

ところが、サービスの場合は、上記のとおり形がなく、しかも生産と消費が同時に起こるため、ものづくりのようにはいきません。このため、サービスの場合は、計画したもの(サービスプロダクト)と、実際に提供したもの(サービスデリバリ)に、ギャップが生じることが少なくありません。 

とりわけ、人の体や人の心を対象にする場合であれば、サービス提供者によって、サービスのバラツキや、顧客から見た印象に、大きな差が生まれることはよくあることといって差し支えないでしょう。また、顧客がサービスの共同生産に大きく関わることになれば、その差は尚更広がります。こういった理由から、サービスデリバリがサービスの構成要素に含まれることになります。

サービスデリバリを経験した顧客は、それに基づいてサービスに対する評価(満足や不満など)を下します。このため、サービスの生産を主に人手に頼っているサービス企業では、サービスデリバリが最も重要な要素になるといえます。


サービス環境

サービス活動が行われる場所の状況、主として物理的な環境のことを指します。リゾートホテルであれば、部屋から眺める外の景色や、部屋の広さ、間取り、部屋の明るさ、部屋でくつろぐ時のソファーの座り心地、館内案内といったものなどが含まれます。また、サービススタッフの制服やフロントデスク、ロビーラウンジ、車寄せのスペース、ホテルの外観など、様々なものが対象になります。 

サービス環境については、常識の範囲でわかることだと思いますが、リゾートホテルにも高級からそうでないものまでランクが幾つかあります。また、リゾートホテルとビジネスホテルでは、当然のことながら異なります。このように、サービス環境は提供するサービス内容によって違いがあり、提供するサービスに見合ったサービスの環境を適切に整備することが重要といえます。当たり前のことですが、意外とこれができていないサービス企業が少なくないのではないでしょうか。


以上のように、サービスは、サービスプロダクトだけでは成立せず、モノプロダクトサービスデリバリサービス環境といったものを、適切に組み合わせることが重要であり、これらをひとつのトータルパッケージとして捉えることが非常に重要です。


ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目

ターゲティングは、はじめにセグメントした市場を評価し、次に 自社が競争に勝てそうなセグメント、或いは攻めるに値するセグメントを特定するというステップで進めます。 セグメントを評価する項目には、以下のようなものが挙げられます。 市場要因  (セグメントの規模、セグメントの成長率、価...