10/20/2024

ブランディング (5)ポジショニング ③差別化の留意点i 始めに問うべきこと(上)

ポジショニング戦略を考える前に、ジャックトラウトとアルライズは、以下の「6つの自問」をすべきとしています。


1. 自社の現在のポジションは?

2. どんなポジションを築きたいのか?

3. ライバルは誰か?

4. 資金は十分か?

5. 同じことを続けられるか?

6. 自社にふさわしい広告を作っているか?


要は、自分・自社をハッキリさせるということに尽きます。実際、自分(自社)の行先が分からない人に、ついていく人はまずいないでしょう。


1. 自社の現在のポジションは?

ビジネスにおいて、現状を正しく認識することは極めて重要であることは言うまでもありません。課題の設定や戦略の立案、オペレーションの改善や改革など、何かを始める時には、まずはじめに現状を把握することが重要です。 

そのためには、ファクト(事実)を洗い出すことが不可欠です。 これまでの自分たちの経験や勘に頼ることなく、思い込みや固定観念といったバイアスを排除して、多方面からファクトを集め、分析することが必要です。また、ファクトを積み上げても、正しく評価されるとは限りません。会社や上司の面子、業界通念、過去の成功体験などに引きずられて、評価そのものが歪められてしまうといったことは少なくありません。 

我々は、日常生活においても、何処かへ行くためにグーグルマップを見れば、まず自分の現在地が示されます。グーグルマップに限らず、施設やホールなどでの館内で案内図を見る時にでも、自分の現在地が明示されています。現在地を正しく知るからこそ、目的地への行き方がわかるようになります。ビジネスでも、同じことだといえます。

なおトラウトとライズは、ポジショニングの現在地は、企業サイドからではなく、消費者の側からのものでなくてはならないといっています。つまり、消費者の頭の中で、自社がどういったポジションを築いているかを知らなければならないということです。 

現在のポジショニングをリサーチする方法には、多変量解析によって、ポジショニングを決定することができます。但し、選定した調査対象者の特徴と数に結果が影響を受けるため、サンプル抽出には偏りがないように注意すること、多数の代表性のあるサンプルを確保することが重要です。ポジショニングによく用いられる多変量解析技法には、因子分析、判別分析、主成分分析、数量化理論II類、数量化理論III類、数量化理論IV類、コレスポンデンス分析、多次元尺度構成法(MDS)などがあります。

どういった技法や手法を使うかは別にしても、トラウトとライズは、我々がすべきことは、すでに消費者の頭の中に存在しているものに、自社のプロダクトやそのコンセプトを関連付ける方法を探すことだとしています。

 

2. どんなポジションを築きたいのか?

ポジションの構築において、最も重要なことは何でしょうか。様々な解析技法や理論、フレームワークや方法論をたくさん知っていることでしょうか。創造性や全体を構想する力、或いは解決策などをまとめ上げていくような論理力でしょうか。いずれも必要な条件だと思います。 

ですが、筆者は「これが進むべき道」と皆に示し、それを必ず実現させようとする強固な意志こそが、最重要なものだと思います。この点において、意志のないままに過去の取組み事例や成功した結果を単に踏襲するといったような考え方では、新しいポジショニングを成功させることなど到底できないといえるでしょう。 

トラウトとライズは、手に入れたいポジションを考える時は、欲張らずに、絞り込めと説いています。大きすぎるポジションは、たとえ手に入れることができたとしても、守りきれなくなると忠告しています。 

ひとつ例を挙げるとすると、少々古くなりますが、筆者にはキリンビールのラガーが頭に浮かびます。アサヒビールのスーパードライの爆発的ブームから、1990年前後を境に、ビール市場は生一色といった感じになりました。キリンビールは一番搾りを発売し、これが同社にとって久しぶりの大ヒットになったこともあってか、スーパードライの追撃態勢をより本格化するためだったのか、驚くことに、なんとラガービールを非加熱処理した生ビールしてしまいました。これにより、ラガービール特有の味は消え失せ、同時にラガービールの確固たるポジションは消滅してしまいました。往年のラガービールファンも去ってしまったのはいうまでもありません。 

 

大半のプロダクトにおいて、万人受けするような商品を開発し販売したところで、結局は誰にも認められないということです。ほかの消費者にも買ってもらいたいなどというのは厚かましいというか、無謀な考え方です。他とは異なる差別化のポイントや、突出した何かを検討したり、練り上げることをせずに、安易に妥協した産物を作ってはなりません。フォーカスするところを決める、絞り続けるべきで、このためには、長期的な視点を持って、手に入れたいポジションを考え続けることが必要です。

長くなりそうなため、続きは次回とさせていただきます。


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