8/01/2023

ツーリズム (4)デスティネーションプランニング ③プロセスiii

前回の地方創生/ツーリズムブログでは、デスティネーションの長期プランニングプロセス2つめのタイプ、ストラテジックプランニング&マネジメント(SPM)における現行戦略の評価までを概説しました。今回は戦略オプションの創出について、述べていきたいと思います。

「2.3 戦略オプションの創出」のタスクは、仮に現行戦略を見直す必要がある場合、特に根本的に創りかえなければならない時に必要となるものです。事業範囲を再定義したり、競争優位性を再構築したりすることで、戦略ロジックも変えていく、というか、根本的に変更する、まったく異なる戦略を複数立案することを指します。

たとえば、デスティネーションAが、近郊(半径50km)に住み、マイカーで来るファミリー層を主なターゲットにしていた戦略を、半径100kmに拡げるといったものは、戦略オプションとは呼ばないと筆者は考えます。ですが、ターゲットを根本的に見直す、たとえば遠く離れた首都圏に住むリタイアした富裕層に変更するのであれば、これは戦略オプションと呼べるものになります。つまり戦略オプションというのは、外部・内部の環境変化によって、デスティネーションが新たにとるアクションの単なる羅列などでは決してないということです。

戦略オプションは、2つかそれくらいの数に絞り込むのがふつうですが、はじめからあまり制限は設けないほうがよいでしょう。というのも、戦略はロジックであると同時に、非常に創造的な行為でもあるからです。発想、思考に制約をかけるのはまったく得策ではありません。一人で自由に思考したり、グループで積極的にブレーンストーミングするなどして、初期段階ではできるかぎり多くのオプションを出すべきです。

「2.4 戦略オプションの評価」で重要なことは、幾つも創られた戦略オプションを比較評価する時に、内外環境との整合性が確保されているかをしっかり検討することです。そしてこの場合、戦略オプションですから、既存戦略とは当然異なるため、検討の仕方、見方・考え方も、既存に引きずられるものであってはなりません。たとえば、デスティネーションAには、首都圏から来訪する人たちを迎え入れる交通手段がかなり貧弱で、列車の本数が非常に少なかったり、下車して何十分も歩くことを強いるものだったりするということだったとしましょう。上述のターゲットには、これではまったく通用しません。少なくとも交通の基盤を整備・強化する必要があります。

何をどれだけ、何処までやるか、どのように行うのかが問題です。交通基盤の整備強化の仕方は幾つか考えられますが、新たな費用投下は避けられず、手段と計画を考えだすことが必要になります。これは非常に分かりやすい例ですが、このようにオプションが現在のデスティネーションのコンテクストと合わないことは多いでしょう。不足しているものを如何に獲得するか、ここはまさに知恵の出しどころです。そんなものはできないよとしてすぐにあきらめるのは簡単ですが、それではいつまでたっても、変わる・変えていくことはできず、地域住民の方々の暮らしを含めて、所謂縮小均衡というものになってしまうのではないでしょうか。

新しいことを創りだすときに、おそらく最も重要なことは、古い習慣や考え方を一度は捨て去り、いかにゼロベースで考えられるかということです。これまでの成功要因に注目したり、過去の事例を、まずはあたるといったことは避けるべきだと筆者は思います。未来が予測しづらく、過去が参考にならないような現代ですべきことは、やみくもに流行りものを手を出そうとしたり、イノベーションと称していたずらに革新的といわれているような手法を身につけることでは得られず、また、その必要もないでしょう。

では、どうすればいいのか。大変難しい問いですが、それはおそらく世の理市場の定理や普遍的な価値といったものを、まずはしっかりおさえることから始め、次に、そこから戦略的に思考を飛躍させることだと筆者は思います。これについては、いずれ別枠で考えてみたいと思います。


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