2/24/2026

ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその7

今回からは、プロモーションにおけるコミュニケーション開発について述べていきます。これまでのプロモーションに関する本ブログの内容は、次のとおりです。 プロモーションその1(プロモーションミックス①)その2(プロモーションミックス②)その3(コミュニケーションの前提)その4(マクロモデル)その5(購買者の意思決定プロセス①)その6(購買者の意思決定プロセス②)


マーケティング/ブランド担当者は通常、コミュニケーションを、自社の顧客とターゲットにしている消費者や見込客に対して、自社のプロダクト(製品、サービス)を購入/利用してもらうように説得するための手段として捉えています。


これを効果的に行うためには、以下の8つのステップで、コミュニケーションの開発をすすめ、管理していきます

1. 市場の理解とターゲットオーディエンスの明確化

2. コミュニケーションの目的設定

3. コミュニケーションの設計

4. コミュニケーションチャネルの選択

5. コミュニケーション予算の決定

6. コミュニケーションミックスの選択と予算配分

7. コミュニケーションの効果測定

8. コミュニケーションの評価


1「市場の理解とターゲットオーディエンスの明確化」ですべきことは、ターゲットに据えたオーディエンスが誰かということをハッキリさせることです。ターゲットが明確でなければ、効果的なコミュニケーションを成立させることはできません。


ターゲットにするオーディエンスについては、ざっくりいっても、既存顧客なのか新規なのか、既存であればどういった利用者なのか(たとえばヘビーかライトなど)、新規であれば対象とするプロダクトの認知度やイメージはどうなのか(どれくらい知っているのか、それとも聞いたこともないのかなど)、また、購入/利用についての意思決定権を持った人なのか或いはそうでないのかといったことが見えていなければなりません。もし見えづらいのであれば、そういった対象をイメージしておく必要があります。ビヘイビアルサイコグラフィックに関係するものは、必ずおさえなければなりません。それ以外のジオグラフィックデモグラフィックの基本的な変数(ブランディング (3)セグメンテーション ①主旨と要件)はいうまでもないでしょう

仮に、その対象が、新規でプロダクトや企業に対して、よくない印象を持っているとすれば、それを払しょくさせなければなりません。ただ、前回のブログで述べたとおり、人は第一印象をなかなか拭いさるのは難しく、またいったん身についた固定観念を捨て去るのは容易ではありません(プロモーションその6(購買者の意思決定プロセス②)。このため、悪い印象を吹き飛ばして、一新させることができるような情報を、状況に応じて受信者に影響力のある人を選定しながら、継続的に発信することが必要です。

コミュニケーションのプロフィールは、はっきりとさせなければなりません。それはとりもなおさず、コミュニケーションの受信者に対して、自社及び自社プロダクトはどのような強みを持ち、どういった弱みを克服しなければならないのかを明らかにしなければならないからです。そのためプロダクトの特徴やメッセージがどれだけ理解されているのか、どのように顧客が受けとめているのかをまず把握することが前提になります。


次に、購買プロセスをおさえて、ターゲット顧客に対する最適なメッセージとメディアに関する理解を、深めることが必要になります。メッセージを効果的に伝達する手段をつきとめることです。そのため、上記4つの大きな変数(ジオグラフィック、デモグラフィック、サイコグラフィック、ビヘイビアル)のうち、ビヘイビアル/行動をしっかりおさえることが重要となります。

ビヘイビアル変数は、(上記の繰り返しになる部分はありますが)購買経験の有無など過去の購買状況、ヘビー・ライトなどの使用頻度、品質・サービス・プレステージ・経済性・利便性・迅速性などのベネフィットの捉え方、購買や返品に関するパターンや仕方等が含まれます。どういうタイプの人たちが、自社プロダクトを購入/利用しているのか、或いはしてもらいたいのか、何故それを購入/利用しているのかといった理由に加え、使用/利用方法とその頻度、場所などを調査する必要があります。

そして、当該プロダクトがおかれている現状がどういうもので、将来どれくらいの売上げ、利益、キャッシュを生み出せるのかを見極めます。これには、オーソドックスな手法にはなりますが、市場セグメントの魅力度とビジネスポジション(競争における差別化要因や優位性)で検討するのが、シンプルで分かり易いのではと思います(ブランディング (4)ターゲティング ②セグメントの評価iiiブランディング (3)セグメンテーション ③法人市場)。


次のステップへ進む前に、マーケティング/ブランド担当者は、コミュニケーションの9つの要素である発信者と受信者、エンコーディングとデコーディング、メッセージと媒体、反応とフィードバック、ノイズについて再度確認しておいたほうがいいでしょう(ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその4)。

次回は、コミュニケーション8つのステップの2つめにあたる「コミュニケーションの目的設定」から始めたいと思います。



2/16/2026

ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその6

前回(プロモーションその5)は、購買者の意思決定プロセスには5つの段階があり、最初の「問題認識(または、ニーズ認識)」、2つめの「情報探索」、3つめの「代替品の評価」について述べました今回は、残りの「購買決定」と「購買後の行動」についてです。


購買者の意思決定プロセス4つめの「購買決定」は、評価した代替品の中から1つのプロダクトを決めて、それを購入/利用する段階です。

ここでひとつ気をつけなければならないことは、現在のような異様な価格高騰が続いている状況下では、消費者は最も気に入った商品を購入するとは限らないということです。

また、今に始まったことではありませんが、日本国内の市場特性のひとつである人目を気にする消費者の存在にも注意を払う必要があります(ここでの人目を気にするというのは、何を買っているか、商品棚などで何を見ているかとか、それらの行為の最中に自分が周囲からどのように見られているのかといったこと)。

人目を必要以上に気にする消費者があまりにも多いため、自分が(心の中で)選んだもの(生活レベルに即して買うべきものや必要なもの)とは明らかに違うものを、結果的に購入/利用するという現象には留意すべきです。こういう状況が常態化すると、人目を気にする消費者は、始めからモノの評価(代替品の評価)をすることなく、周囲の購買行動に合わせるということになっていきます。


このような謂わば単純化されたやり方、ヒューリスティックな思考で、プロダクトの購買を決定することが、今日では珍しくありません(ヒューリスティックについては、問題解決力 (2)問題とアプローチを考える ③思考の罠i)。コトラーとケラーは、消費者のメンタル・ショートカットとして、以下のヒューリスティックを紹介しています。

連結型ヒューリスティック: 消費者が最低限許容できる基準を設定し、それを満たすプロダクトがあれば購入するという選択の仕方

辞書編纂型ヒューリスティック: 消費者が最も重視する属性を備えたプロダクトの中で、最上位のものを選択するというやり方

属性排除型ヒューリスティック: 消費者にとって重要度の高い属性1つを取り上げてプロダクトを比較し、当該属性で許容水準に達しないプロダクトは排除するという方法

これら3つのヒューリスティック以外にも、今日のような極端なインフレが続いている社会状況では、低価格重視のヒューリスティックが存在すると筆者は思います。プロダクトが低価格であれば、迷うことなく、或いは自動的に、品質は度外視して選択するという購買スタイルです。何十年も前から存在していたとは思いますが、今日ではより顕著になっているといえるでしょう。


こういったヒューリスティックは、単純化された経験則やメンタルの近道のため、バイアス(偏見)を生むことが少なくありません。最もよく知られているものに、利用可能性ヒューリスティックがもたらすバイアスがあります(問題解決力 (2)問題とアプローチを考える ③思考の罠i③思考の罠v)。これは、想起しやすいもの、利用しやすい事柄を優先して判断することによるバイアスです。

たとえば、近年では季節をあまり問わずに食中毒が発生しています。仮に、個人経営のレストランか旅館で食中毒が発生したというニュースがあったとしましょう。これを見たある消費者が、個人経営は食中毒発生のリスクが高いと過剰に捉え、ある程度の規模を擁するチェーン形式のレストランや旅館を選択する方が安全だと考え、チェーン形式のほうを(内容をあまり検討することなく、ある意味やみくも的に)選択するといったことにつながります。

実際のところは、個人経営のほうがより多くの食中毒を発生させているかどうかはわかりません。けれども、その消費者にとっては、情報の新しさであったり、記憶の鮮度が高いといったことが思考に影響を与えることによって、チェーンを選ぶという意思決定につながります

ほかには、たとえばある特定の電気製品は3年を過ぎたら故障する可能性が高いとされているため(実際は、故障した製品が当該製品全体の0.1%にも満たない結果であったとしても)、5年の保証期間がついたものを消費者は選択したがるといったことも、利用可能性ヒューリスティックによるバイアスの典型例として挙げられるでしょう。


利用可能性ヒューリスティックによるバイアス以外でよく知られているものに、代表性ヒューリスティックというのがあります。これは、人は特定の個人や物事に対して判断する時は、その人自身が持つ固定観念に合う特性を見つけようとする傾向があるということを表します。この代表性ヒューリスティックは、はじめにおおよそのところで正解の方向を示してくれるといわれている一方で、大きな誤りをもたらすこともあるとされています。また、このヒューリスティックは、意識、無意識に関係なく発動するともいわれており、人種差別などはその代表例に挙げられます。

人はデータや情報が不足している時のみならず、ほかに適切な利用可能な情報があったとしても、代表的な情報を信用してしまうといった深刻な誤りをもたらす、このようなバイアスで特定の人や物事を判断してしまうことが珍しくないといわれています。

たとえば、高齢で少しくたびれた感じの男性が、高級輸入車の販売店にやってきたとしましょう。その男性は毛玉とりを何度もしたかのようなウール地のカーディガンを着ています。そのカーディガンは、長年クリーニングに出し続けてきたかのようで、薄っぺらく着古されたものに、周囲には見えています。しかもその男性は、その店に、電車とバスを使って一人でやってきているとしたら、その店の営業パーソンはその人をどのように見るでしょうか。営業パーソンの何割くらいが、その男性に客としての魅力を感じるでしょうか。実はその男性は、神戸市東灘区に住む日本でも有数の資産家で、外出時はできる限り目立たないように振る舞っていたとすればどうでしょうか。もし、営業パーソンがその男性の着ている薄っぺらいカーディガンが最高級のカシミアであることに気づいていたら、応対の仕方は変わったかもしれません。一人で来店しているのも、いつもお付きの人がいるので、たまには一人で外出したかったのかもしれません。

別の例を挙げると、大手小売企業が販売しているものを、無条件で信用している人が一定割合存在しているのはよく知られていることです。けれども、(全ての大手がそうではありませんが)品質的には決して安心できるものではなかったり、賞味期限を改ざんしていたり、同一商品カテゴリーでもっと良い品があるにも関わらず、それらは商品仕入時の値入率(利益率)や条件が当該大手小売企業には良くないために店頭には並ばないといったようなことは珍しくありません。ですが、消費者はその小売企業が日本でも有数の規模で全国展開しているというただそれだけの理由で、盲目的なくらいに信用しているといったことも、代表性ヒューリスティックに起因するバイアスです。このように、代表性ヒューリスティックは、有用な意思決定の仕方であるといわれている一方で、多用しすぎると大きな機会損失やしっぺ返しなどにつながります。


もうひとつヒューリスティックのタイプを挙げると、感情ヒューリスティックというのがあります。人が行う判断の多くは、論理的に思考する前に(或いは、論理思考などはまったくせずに)、良し悪しとか、購入するしないを感情に頼って決めている場合が多くあり、昨今の日本市場では特に顕著に観察できるものです。そして、人は自分の得になることを過大に評価し、損失やリスク発生要因は過少に評価するか、そもそも見逃してしまいます。また、いつまでも第一印象に固執しやすいという研究結果もあります。普通に考えれば、時間をかけて相手のことがわかっていくにつれ、第一印象は薄れていきそうなものですが、そうでないケースが多くあるということです。

感情ヒューリスティックは人の低い次元の感覚に訴えて、対象の全体の姿や、複雑なシステムに内在されているマイナスの面を無視するといわれています。今日のデジタル時代では、ふつうに存在する何らかの意図をもった情報源の実態(恐ろしさ)、そういったものに気づいた時には、私たちは感情で即断してしまうのではなく、また第一印象で決めてしまうのでもなく、事実を積み上げて、全体像をしっかり見て判断する必要があります。このようなヒューリスティックについては、あらためて別の機会に取り上げたいと思います。


最後、5つめの「購買後の行動」とは、プロダクト購入/利用後に、感じた満足感や不平不満などに基づいて、消費者がとる行動の段階になります。どれくらいの満足を感じるか、或いは不満を抱くかといったことは、消費者がプロダクトの購入/利用前に思い描いた期待との差といえます。期待が大きかったにも関わらず、得られたものが少なければ大きな不満となるでしょう。

マーケティング/ブランド担当者がすべきことのひとつに、購買後の満足度の調査、モニタリングがあります。新規顧客の獲得は容易ではなく、既存顧客を維持し、継続購買につなげていくことが、安定的な売上向上とブランド構築の強化には欠かせません。本来であれば、プロダクトの購入/利用前に、消費者が期待する値をコントロールすることが望ましく、実際のプロダクトパフォーマンスどおりに、プロダクトをアピールしなければなりません。そう考えると、現在の企業や自治体、お店のホームページやプロモーションなどは、直ちに見直すべきということになるでしょう(あまりにも、極端な、見せかけだけのものが多すぎるからです)。

コンサルティングビジネスでは、シニアクラスのコンサルタントはクライアントの期待値をコントロールすることが、すべきことのひとつです。期待値をいかに管理していくか、これについては、また機会を見て触れてみたいと思います。次回は、消費者を対象としたコミュニケーションプロセスについてです。


2/09/2026

ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその5

前回(プロモーションその4)は、マーケティングコミュニケーションのマクロモデルと、知覚の3タイプ(選択的注意、選択的歪曲、選択的記憶)について述べました。知覚は消費者心理のひとつですが、ほかに、動機、学習、記憶があります。マーケティングプロモーションにおけるコミュニケーションの開発とそのながれについて検討していく前に、はじめに消費者心理について、簡単に触れておきたいと思います


消費者心理のながれは、最初が「動機」、次に「知覚」、その後に「学習」、最後が「記憶」です。動機は、人が持つ数あるニーズの中で、実際の行動を起こすレベルに達したものを指します。学習は、知識の習得など、様々な経験をとおして、行動が変化する過程のことをいいます。記憶は、脳に蓄積された過去の経験や情報を思い出すことです。消費者心理のながれをとおして、人は行動や学習によって、信念や態度を形成していくことがわかります。このように、消費者の行動というのは、多くのこと(4つの消費者心理と、文化的・社会的・個人的な消費者特性)から影響を受けることになります


それではここから、人がプロダクトを購入しようとする時、どのようにして決定するのかを見ていきます。

購買者の意思決定プロセスには、一般的にいえば5つの段階があるといわれています。「問題認識(または、ニーズ認識)」→「情報探索」→「代替品の評価」→「購買決定」→「購買後の行動」です。

但し全ての消費者が、プロダクト購入時に、必ずこのながれに従うというわけではありません。たとえば、いつもこだわって買っているポン酢があるとすれば、その場合は問題認識から一気に購買決定へと進むでしょう。ただ通常、この5段階はプロダクトに対して高い関与を持つ場合の全ての動きをおさえていると言われています。


購買プロセスは、問題やニーズを認識した時が起点となります。この時点で、消費者は、自分のおかれている状況と、望んでいる状況との違いを感じるということになります。なおこの「問題認識」には、空腹や眠気といったような自身の内的刺激と、人によりますが、たとえば映画を観て俳優が着こなすコートが欲しくなったり、知人が乗っているスポーツカーを羨ましいと感じたりするといった外的刺激の2種類があるとされています。

内的と外的に違いはありますが、どちらも問題認識が購買意欲を喚起するきっかけになる点で共通しています。この段階では、マーケティング/ブランド担当者は、どういう問題やニーズが起こっているのか、それらが生まれた背景にはどういったものがあるのかということを、仮説をもって調査を行い、明らかにする必要があります。こういう調査をとおして(仮説を検証する調査を行うことで)、自社プロダクトの購買/利用に対する消費者の動機を高められるマーケティング戦略を展開できるようになります。


2番めの「情報探索」では、問題やニーズを感じた消費者が、自ら情報を集める段階です。問題があっても、探索を一切しない人もいるでしょうが、ここでは通常、人は問題解決に向けたアクションである情報探索を行うことを前提として進めます。コトラーとケラーは、消費者の情報源には、個人的情報源、商業的情報源、公共的情報源、経験的情報源という4つに分類されると言っています。

以前は、マーケティング/ブランド担当者がコントロールできるものは商業的情報源であり、消費者の情報探索として最も効果的なものが家族、友人、隣人などの個人的情報源であると言われていました。今日、この個人的情報源に、見ず知らずの人のネット上の口コミを含めるとすれば、それは20世紀の個人的情報源とは、まったく質が異なるものになったといえるでしょう。

口コミを十羽一絡げに捉えるのはよくないにしても、それでも商業的な側面を否定することはできず、仮に口コミを商業的情報源に加えるとすれば、広告、ウェブサイト、販売員、ディスプレイなどを含めた商業的情報源が、現在では最も大きな情報源になるといえるでしょう。そう考えると、自社がターゲットにする消費者が重視する情報源が何で、何故それを重視しているのかを、予め把握しておくことが欠かせません。


3番めの「代替品の評価」は、消費者が情報を探索して選択した幾つかのプロダクトを評価する段階です。ここでのマーケティング/ブランド担当者にとっての問題は、評価の仕方は消費者ごとに異なることと、同じ消費者であってもプロダクトによって評価の仕方が変わってくるということです。そこで、我々が最低限気をつけなければならないことは、消費者の問題認識またはニーズ(購買者の意思決定プロセスの一番最初の段階)が、そもそもどういったものなのかを把握しておくことが不可欠であるということになります。

つまり、プロダクトの属性の一つまたはそれ以上の集まりがベネフィットを提供するという考え方に基づけば、どういったベネフィットを備えているプロダクトが評価対象になっているのかを、我々は調査しなければならないということになります。

ただ、ここで網羅的に属性やベネフィットを調べるというのは、あまり現実的とはいえないでしょう。というのも、消費者の多くはそもそも移り気です。仮にあれこれ考えたとしても、賢明な人は、結局、最も強い問題認識(またはニーズ)を解決しようとして、ひとつ(くらいのもの)に集中して評価する傾向があると、筆者は考えるからです。実際、多くの属性やベネフィットを訴求できたとしても、消費者に記憶されることは難しいからです。(属性とベネフィットについては、ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法v a-b-eモデルその1ブランディング (3)セグメンテーション ②消費者市場ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法iii I-D-Uモデルその1)


次回は、「購買決定」から始めたいと思います。


2/02/2026

ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその4

前回までは、プロモーションミックスの5つの要素(ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその1その2)と、効果的なコミュニケーションを行う上でのおさえるべき事柄(その3)について概説しました。今回からは、幾つかのプロモーションを組み合せたコミュニケーションの開発とながれについて述べていきたいと思います。


開発とながれを検討する前に、コミュニケーションを構成する基本的な要素について、はじめに明らかにしておいた方がいいでしょう。フィリップ・コトラーとケビン・レーンケラーは共著『マーケティングマネジメント第12版』で、コミュニケーションプロセスのマクロモデルにおける要素を、以下のように9つ挙げています。

マクロモデルのフローは、発信者→エンコーディング→メッセージと媒体→デコーディング→受信者→反応→フィードバック→発信者、というサイクルです。


発信者とは、受信者にメッセージを送る者を指し、ビジネスの場合は多くが企業になります。受信者は、発信者から送られてきたメッセージを受け取る者で、消費者であったり、法人の顧客にあたります。

メッセージは、発信者が受信者に送る表現形態であり、企業のロゴやシンボルマークなども含まれます。メディアは、コミュニケーション媒体のことをいい、コミュニケーションツールであり、紙の雑誌やデジタルカタログなども含みます。

エンコーディングとは、データを一定の規則に基づいて目的の情報に変換する符号化のことで、発信者の思考を表現形態に変換する過程を表します。デコーディングは符号化された情報を元の状態に戻す処理のことをいい、受信者が言葉や絵などの表現形態を理解する過程を表します。

反応は、受信者が表現形態を理解した後に示す反応のことで、好きや嫌い、賛同や拒絶などで、その結果としてプロダクトを購入/利用したり、また、何もしないといったことを含みます。なお、表現をそもそも理解することができないといったことも、反応にあてはまります。

フィードバックは、受信者が受け取ったことについての反応を発信者に伝達するものを表します。

9つめのノイズというのは、発信者が意図したものとは異なるかたちで受信者にメッセージが伝達されてしまうような現象や、コミュニケーションを妨害するおそれのあるランダムな(規則性のない)主張であったり、競合他社のメッセージなどを指します。つまり、媒体や反応などに影響を与えるもののことをいいます。


このマクロモデルは、発信者がターゲットにする受信者に対して、どのような媒体をとおして、メッセージを伝達するのか、そのメッセージは受信者が理解できる内容に編集されているのか、また、その反応を得られるようにコミュニケーションのフィードバックチャネルは作られているのか、といったことなどを取り上げています。


ところで、マーケティングでは現実よりも知覚のほうが重要であるとコトラーとケラーは述べています。コトラーは、知覚とは、情報を選択、整理、解釈し、何らかの意味ある世界観を形成するプロセスだと説いています。


ここで重要な点は、同じ現実に対しても、人によって知覚は様々だということです。それ故、人がどのように行動するかは、現実をどのように知覚するかによって決まるということになります。このように、知覚は人の行動に影響を与えるため、マーケティングでは、知覚の方が現実よりも重要であるということになります。


この知覚には、選択的注意選択的歪曲選択的記憶という3つのタイプがあるとコトラーは述べています。


選択的注意というのは、日々膨大な量の情報を受け取る消費者(または法人企業の担当者)は、その全てに注意を払うことができないため、その多くを意識的、無意識的に除外している行為のことをいいます。このため、マーケティング/ブランド担当者は、人々の注意をひくことに、相当な注意を払う必要があります。

どういった情報や刺激に、人が最も反応するかということについては、コトラーとケラーは、「人は現在のニーズに関係のある刺激に反応する傾向がある」、「人は予想していた刺激に反応する傾向がある」、「人は通常よりも刺激の強いものに反応する傾向がある」の3つを挙げています。

なおここで言われている刺激とは、大別すれば2つあります。ひとつにはマーケティングによる刺激で、プロダクト・プライス・プレイス・プロモーションの4Pです。もうひとつは、その他の刺激として、経済的・技術的・政治的・文化的というものです。


選択的歪曲とは、受け取った情報や刺激を、受け手が自分に都合の良いように解釈することをいいます。これには先入観や思い込み、固定観念、プロダクトやその作り手またはその提供者に対して抱いているイメージなどであって、人は自分に合うように情報を歪曲するというものです。

この選択的歪曲は、強いブランドを持つ企業にとっては、消費者が好意的に情報を捉えてくれるため、有利に働くとされています。そのため、さしておいしくもないものをおいしいと感じたり、性能が凡庸な製品であっても、強いブランドを表すロゴがついているだけで、高性能だと捉えてしまうといったことが代表例として挙げられます。

つまるところ、人はいかにバイアスで物事を捉えているかということになってきますが、マーケティングを超えて、ビジネス全般のことでいえば、こういった現象は、認知バイアスと呼ばれています。認知バイパスとは、自身の経験による固定概念や先入観、思い込みなどによって、認識が偏って、合理的に行われなくなる心理現象のことをいいます(問題解決力 (2)問題とアプローチを考える ③思考の罠ii)。


選択的記憶とは、人は多くのことを忘れるが、自分の態度や信念を裏付けてくれる情報は記憶している傾向があるということを表します。この選択的記憶も、選択的歪曲同様に、強いブランドには有利に働きます。お気に入りのプロダクトの良い点はしっかり記憶している一方で、競合するプロダクトの長所は忘れてしまうといったことなどが挙げられます。このため、ターゲットオーディエンスの記憶に留まるために、メッセージは何度も何度も発信する必要があるということになります。

以上述べてきた知覚は、マーケティング上、消費者心理の1つの要素として数えられています。ほかの消費者心理である動機、学習、記憶については、次回で簡単に触れることにしたいと思います。


ブランディング (7)マーケティングミックス⑤ プロモーションその10

今回は、コミュニケーション開発を効果的に行うための8つのステップの5番目と6番目についてです。4番目までのステップ については、以下をご覧ください。 1 「 市場の理解とターゲットオーディエンスの明確化 」 、2 「 コミュニケーション目的の設定 」 、3 「 コミュニケーション...