11/16/2023

ツーリズム (5)マーケティングプランニング ②プロセスxi

今回はマーケティングプランニングシステムにおける「3.マーケティング戦略策定」の最初のステップ、「3.1 マーケティング仮説」についてです。

前回のブログで、顧客を知ることの重要性について触れました。では、どのようにすれば、顧客を知ることができるのでしょうか。たとえば何故あのデスティネーションには人が集まるのか。感覚的に捉えることも大事ですが、議論が感覚的なものだけで終わることは避けなければなりません。事実を集め、集めた事実を元に、分析していくことが必要です。

事実を集めるために、大規模なアンケート調査を行うことがありますが、ただやみくもにデータを集めて分析すればいいというわけではありません。重要なことは、「こういうことだろう」という仮の答え(仮説)をつくって、その仮説をもとに調査内容を決め、調査の対象や調査の方法、調査の項目などを決定していくというながれにすることが重要です。仮説に基づき行った調査結果から、仮説を検証し、必要に応じてその仮説を修正していきます。(仮説については、右記ブログをご参考ください。営業力強化(2)価値ある提案をするために⑨営業力強化(2)価値ある提案をするために①)

仮説をつくるためには、はじめに、何が問題になっているのか、何に対して答えを出さなければいけないのかを明確にすることから始めるのがよいでしょう。そのためには、自らデスティネーションへ行き、そこで過ごしながら自分も観光客の一人になってみることもあるでしょうし、ほかの観光客を観察したり、観光客やサービス提供者などに話を聞いてみることも必要でしょう。また、当然のことながら調査資料にもあたります。こういったことを総合的に組み合わせて、仮の答えである仮説を考えてみるのが一般的といえるのではないかと思います。

ただ、これは一般的なやり方だけであって、人によって方法はいろいろありますから、上記のようにするのが必要だというわけではまったくありません。実際、仮説づくりに慣れている人は、分野にもよるでしょうが、はじめから直観を働かせて、えいやー的に(?)仮の答えを出す人たちがいます。情報の少ない段階から、こういうことができる人に共通していえることは、問題の全体像を考えるからだと筆者は思います。全体像を捉えようとするからこそ、はじめは部分的な仮説であっても、新しい情報を加え分析を重ねていく過程で、仮説の精度を上げていくことができるようになるわけです。

仮に、あるデスティネーションの観光客が年々減少していたとします。ここで考えるべきことは2つあります。はじめに、何が問題なのかを考え、次に、その問題(仮説)を解決する方法を考えること。前者は問題発見、後者は問題解決、この2つをいずれも仮説で行うことです。

問題発見を仮説で行う際、問題はこれではないかというあたりをつけることから始めます。ここで気をつけなければいけないことは、網羅的にしようとしないことです。とにかくこれだと思える問題をざっくりと3つから、せいぜい5つくらいまでを挙げてみることです。たとえば、

競合するデスティネーションと比べてアクセスが不便なため客足が遠のくなどの問題がある(たとえば鉄道の運行が1~2時間に1本の上、最寄り駅から目的地まで徒歩で30分くらいはかかるなど)。

法人などの大口顧客を対象にした販売チャネルへの営業活動に問題がある(営業パーソンの営業活動にあてる時間が少ない、営業パーソンの数が少ない、営業パーソンが魅力的なモノやサービスの提示ができないなど)。

広告・販促は、予算配分が今も10年前も変わらず、マス媒体やラッピング電車などの交通系広告中心に行われている。

次に、問題と考えられる上述の3つ、アクセス、チャネル、プロモーションについての初期仮説を検証します。調べると、たとえば次のようなことがわかりました。

アクセスについては、競合デスティネーションと比べて、一見大差ないように見えていたが、競合はレンタサイクルは当然のこと、料金均一の小型タクシーや、乗り合いタクシーを積極的に投入するなどして、観光客に不便さを感じさせない移動交通/インフラの基盤を整備していた。

チャネルについては、競合と比較して営業パーソンの数は少ないようだが、チャネル別の売上では競合と比較してそうそん色があるわけでもなく、むしろ健闘しているようだ。問題は結局、法人ではなく個人客の取り込みにある。

広告・販促などのプロモーション全般については、多数ある顧客接点(カスタマータッチポイント)を活かしているとはいえず、場当たり的に打ち手を連発している状態。また、そもそもターゲット顧客に情報が届いているのか、見てもらっているのかどうかなども不明。観光サイトは一応あるものの、競合と比べて情報がわかりやすく整理できておらず、地域の魅力をうまく発信できているともいえない。潜在顧客の目で見れば、行ってみたいという動機づけになるようには到底思えない状況下にある。

これらの調査結果から、当面の問題をアクセスとプロモーションに絞ることにしました。なかでも、アクセスについては相応の費用がかかるだけでなく、実現可能性の面でも時間がかかることから、まずはプロモーションにおける問題解決を先行して行います。続きの問題解決の仮説づくりについては、ブログの長さの関係から、次回にまわしたいと思います。


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