前回は、コミュニケーションを効果的に行うための8つのステップのうち、最初の「市場の理解とターゲットオーディエンスの明確化」について述べました。今回は、2つめのステップ「コミュニケーション目的の設定」と、3つめの「コミュニケーションの設計」についてです。
2「コミュニケーションの目的設定」では、マーケティング/ブランド担当者は、コミュニケーションをとおして、ターゲットオーディエンスからどのような反応を得たいのかを、はじめにはっきりさせなければなりません。通常であれば担当者が望むオーディエンスの反応は、プロダクトの購入/利用になるはずです。けれどもコミュニケーションには一定の時間を要します。一般的に言って、メッセージの受信者が、すぐにプロダクトを購入/利用するということは稀なことです。このため担当者は、受信者の心理上のプロセスを見極めることが重要になります。
心理上のプロセスを検討するのに役立つものとして、よく知られているものにAIDMAというフレームワークがあります。Attention/注意、Interest/興味、Desire/欲求、Memory/記憶、Action/行動、これら5つの頭文字を取った用語で、アナログ時代の消費者行動を読み解く基本として活用されてきました。消費者は、まずプロダクトの存在を知り、興味を抱き、欲しいと思うようになり、それを記憶して、最終的に購入/利用に至るというもので、Attentionは認知の段階、Interest、Desire、Memoryは感情の段階、Actionは行動の段階になります。(なお、AIDMAのMを除いたAIDAというフレームワークもあり、人によってはこちらのほうがよりシンプルで使いやすいかもしれません。)
オーディエンスがプロダクトを知らなければ、Aでは、注意を引くように、認知度を上げていくようにしなければなりません。Iでは、認知されていても興味がないようであれば、興味を持ってもらえるように、プロダクトの特性などを訴求することで、関心を惹きつけるようにします。Dでは、興味があってもプロダクトを欲しいと思ってはいないため、ニーズを喚起していきます。Mは欲しいと思ったことを忘れてしまっているため、記憶を呼び起こす必要があります。そして、最後のAでは、購入/利用のアクションにつながる具体的な機会を提供することで、オーディエンスに行動を起こしてもらうようにします。
このように、マーケティング/ブランド担当者は、オーディエンスがどの段階にあるかを見極めて、コミュニケーションする必要があり、見込みのあるオーディエンスの頭(または心)の中に、ポジショニングできるようにしていきます。
アナログ的なAIDMAに対して、電通が提唱したAISASというインターネット上での購買行動の心理モデルがあります。Attention/注意、Interest/興味は同じですが、次にSearch/検索、その後Action/行動、最後にShare/共有というながれになります。
AIDMA、AISAS、または他のいかなるフレームワークを用いようとも、重要なことは、ターゲットオーディエンスが、購入/利用に至る過程で、今はどの段階にいて、次はどこへ持っていくのが良いのかを把握しておかなければならないということです。そうでなければ、的確なコミュニケーションなどできるはずがありませんし、ましてやプロダクト/ブランド・ポジションなど確立しようもないからです。
ポジショニングの3段階手法を提唱したジョン・R. ロシターとラリー・パーシーは、コミュニケーション目的の選択は、カテゴリーニーズ、ブランド認知、ブランド態度、ブランド購買意図、購買促進という5つの基本的なコミュニケーション効果に関する選択肢から行われると述べています。
(3段階手法については、こちらをご覧ください→ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法i X-YZモデルその1、3段階手法ii X-YZモデルその2、3段階手法iii I-D-Uモデルその1、3段階手法iv I-D-Uモデルその2、3段階手法v a-b-eモデルその1、3段階手法vi a-b-eモデルその2、3段階手法vii ポジショニング・ステートメント、3段階手法viii まとめ)
3「コミュニケーションの設計」では、何を、どのように、発信するかを決めていきます。「何を」はメッセージ、「どのように」はクリエイティブで、この2つをいかに組み合わせるかということになります。
メッセージは、AIDMAのながれのように、消費者を惹きつけることができれば理想的でしょう。マーケティングコミュニケーション担当は、メッセージを創るにあたり、何を(メッセージの内容)、どのように(メッセージの構造と形式)語るのかを決めなければなりません。
コトラーはこれらについて、メッセージ特に広告には、機能訴求、情緒訴求、倫理訴求という3つの訴求があると述べています。
メッセージの構造では、3つの点を検討する必要があります。広告主が結論を引き出すのか、或いは問いかけをするにとどまり、購買者が結論を出すようにするのかが1点めです。2点めは、主張はプロダクトの良い点だけにするのか、または長短どちらも行うのか。3点めは、最も強い主張をはじめに持ってくるのか、最後にまわすのかということです。
メッセージや表現アイデアについては様々な理論がありますが、経営/ビジネスコンサルタントである筆者が述べるのはあまり適切なことだとは思いませんので(広告クリエーターの人たちが語るべき)、コミュニケーションの設計については、これで終わりにしたいと思います。次回は、4つめのステップ「コミュニケーションチャネルの選択」から始めます。