4/15/2023

サーキュラーエコノミー 6つのモデルと事例③

(CE6モデルのうち、「モノのサービス化」と「消費や利用の共同化」はこちら、「原材料の改変」と「資源の再利用」はこちらをご覧ください。)

デザインによる廃棄物ゼロについては、以前にご紹介したフィンランドのノッラや、開発途上ですがアディダスのフューチャークラフト.ループがあります。同社は、100%リサイクル可能なランニングシューズを19年4月に発表し、その後も新作を公開していますが、正式な製品発売には至っていません。コンセプトは素晴らしいのでしょうが、量産化の面などで課題があるようです。

フェアフォンのスマホは静かなブームになっています。10年以上も前に、世界初の「エシカルなモジュール式スマホ」としてオランダで発売されました。故障しても部品を買い替えれば使用可能で、21年発売のモデルはなんと5年間の長期保証です。

日本では、ミツカングループのZENB(ゼンブ)」という取組みが該当するのだろうと思います。このブランドは素材をまるごと原材料として使用することで、廃棄物を減らすことを企図したとのこと。2020年8月に京都市と「食品ロス削減に資する取り組みの連携に関する協定」を締結しています。

同じ食の領域であれば、以前にも取り上げたエシカル・スピリッツ社の取組みが秀逸で、引き続き要注目でしょう。なお、同社製品については、デザインによる廃棄物ゼロとして取り上げましたが、原材料の改変や資源の再利用にも該当します。

食品以外では、やはり着物を挙げるべきで、デザインによる廃棄物ゼロとして取り上げたいと思います。サーキュラーな国②日本その1に記載したとおり、着物は洋服と異なり立体裁断がありません。それ故、端切れがでることは殆どありません。縫い目も直線のため、仕立て直しがしやすいことから、傷んできたら例えば子供用の着物に、下駄の鼻緒や雑巾などでの再利用がすぐにできます。このようなことから、着物は商品ライフサイクルの拡張にも該当します。

商品ライフサイクルの拡張については、サーキュラーエコノミー事例②で述べたように、ルイ・ヴィトンやサルバトーレ・フェラガモなど、欧州のトップブランドの製品ポリシーや、実際に購入した顧客の当該製品の使い方などを見れば、明らかです。日本とは異なり、フランスやイタリアの消費者は、本当に良いものをいつまでも長く愛用し、大切にしています(勿論、日本人でもそういう方はいらっしゃいますが、日本の場合はどちらかというと、皆が買っているから自分も買うというスタンスかと・・・)。欧州では、誰もが購入する(または購入したい)ブランドではない分、より顕著といえるでしょう。

デジタルを活用した典型的な取組みでは、2016年創業の米国トローヴ(Trove)を挙げるべきかと思います。ブランド品の再販プラットフォーマーである同社は、再販売のバリュー チェーンをはじめからおわりまで統合的に管理(リコマース・オペレーティングシステム)し、2025年までに数千万の商品の再販を計画、これは年間4000台の車をなくすことに相当すると自社ホームページで主張しています。日本にもブランド品を再販売する会社は少なくありませんが、対象業務(または機能)の広さや深さ、それを実現するデジタル投資の規模、そして変化に対応するだけでなく、変化そのものを生み出していこうとするスピード感といったようなものには、大きな差があるといわざるをえません。

ほかには、グローバルで展開するブリジストンのリトレッドソリューションが挙げられます。すり減ったタイヤの路面と接する部分(トレッドゴム)を貼り替え、使用済タイヤを再利用するリトレッドタイヤは、新品タイヤと比べて、原材料の使用が3分の1未満になるだけでなく、トレッドゴム以外の部材(台タイヤ)を再利用できるため、廃タイヤの削減にも寄与するとのことです。

環境経営として有名なリコーグループは、1997年に複写機として初の再生機を発売。新品同様の保証がある高品質な再生機として、日本はもとより、欧米アジアで製品とサービスを展開しています。再生機の回収から出荷までの製造を中心としたフローを、ホームページで紹介しています。この取組みは、資源の再利用やデザインによる廃棄物ゼロにも該当するものといえます。

小田急電鉄グループのサーキュラーエコノミーの取組みである神奈川県座間市のホシノタニ団地再生はよく知られています。この取組みは、築50年以上の団地をリノベーションし循環型コミュニティ(広場や賃農園等配置)を創出した成功例として、Sitra(フィンランド)の「世界を変えるサーキュラーエコノミー・ソリューション」に、日本企業で初めて選出されました。また、20年8月から、廃棄物処理テックベンチャーの米ルビコン・グローバル社と、ゴミ収集に関する実証実験を開始。同市の人手不足をデジタルで解消することにも取り組んでいます。

最後に、和歌山にあるみなべ・田辺の梅システムです。サーキュラーな国②日本その2でも述べましたが、開墾した山を全て梅林にするのではなく、薪炭林(しんたんりん)として森を守り、持続可能な農林業を維持。多くの梅の品種は自家受粉できず、ミツバチによる受粉で梅が育つという共生関係下で、薪炭林から海辺まで続く多様な生態系を保持しています。2015年に世界農業遺産に認定されたこの梅システムは、商品ライフサイクルの拡張のみならず、原材料の改変、資源の再利用、デザインによる廃棄物ゼロにも適応しているといえるでしょう。




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市場特性は、様々な要因に左右されます( ブランディング (4)ターゲティング ①セグメントの評価項目 )。 規模と成長率だけを考慮すればいいというわけでは決してありません。 大規模で右肩上がりに成長を続けるセグメントが有望であることは事実ですが、それ以外の要因が同じであることはめ...