5/25/2022

新規事業創出 (2)ビジョン①

ビジョンの根幹はバリューといわれています。バリューとは、組織が最も重要と考えるものであり、組織構成員の行動や考えを司る価値観や、原理原則といったものといえるでしょう。

ビジョン策定のながれは、オーソドックスに言えば、はじめにバリューを明らかにし、次に現在の内外環境を理解した後に、ミッションを再確認して、将来に向けたビジョンを描くということになります。イノベーションマネジメントの領域においても、これに従い、ビジョンを考え、策定していくというのでも、勿論構いませんが、できれば濃淡をつけてビジョンを策定することをお薦めします。

それは第一には、シナリオを考えることが非常に重要であるということです。関係者が自身で考えるシナリオなくして、活きたビジョンをつくるのは難しいでしょう。ひとくちに新規事業といっても、どういった世界、どれくらい先を見据えて取組むかによっても、大きく異なります。筆者が過去に在籍したIBMでは、新規事業を3つに分けて、検討していました。

ホライゾン1(H1):成熟した市場と事業
ホライゾン2(H2):新しい成長が見込める市場と事業
ホライゾン3(H3):長期的な成長のための実験的なポートフォリオ

たとえば、H1とH3では、まったく違います。H1は市場を拡大することに主眼がおかれますが、H3であれば、市場の拡大ではなく、市場そのものを創造することになります。このため、当然のことながら、考えるシナリオは異なるものとなり、ビジョンも変わります(但し、かなり漠然としたビジョンであれば、同じかもしれません・・・)。

どのホライゾンを狙うのか、或いは属するのかといったことを考えることは、シナリオ作成には大いに役立ちます。一切の制約や範囲を定めることなく、ゼロから考えたいという方もおられるかもしれませんが、それはあまり現実的とはいえないでしょう。筆者自身は、必ず範囲を決めて考えるべきだと思っています。

また、ご存知の読者の方も多数いらっしゃると思いますが、アンゾフの成長マトリクスは、よく知られています。縦軸に市場、横軸に製品や技術を据え、且つそれぞれ(市場と製品/技術)を既存と新規に区分し、4つの象限で事業などを考えるというものです。

範囲を考える時は、第二に対象とする業界や産業、顧客、製品、技術について考察すべきです。その上で、戦略的な狙いを明確にしていくといったことが必要です。

対象範囲が明確になれば、当該領域におけるトレンドや、チェンジドライバー(変化を推進するもの)、そのインパクトの大きさと発生する可能性などについて検討を重ね、シナリオ全体をまとめます。

シナリオを考えたら、次はそのシナリオに基づいたビジョンを作ります。その後は、策定したビジョン達成に向けたロードマップ(戦略)を練るというながれで進めます。なお、ロードマップがなければ、単なる掛け声だけで終わる可能性があるため、注意が必要です。

以上から、新規事業においてビジョンを考えるという行為は、戦略的な見地から目指す将来像を描くことだといえます。言い方を変えれば、ビジョンがなければ、具体的な戦略を創ることができないということになります。

続きは次回へまわしたいと思います。

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