5/19/2022

脱炭素経営の取組み (4)Scope3②

スコープ3のカテゴリ1(自社が「購入した製品・サービス」)について、何処まで正確に把握すべきでしょうか。精度が高ければ高いほど良いのでしょうが、それに係る労力・コストなどを考えると、はじめに排出量を算定する目的を、あらためて確認することが重要です。また、自社の算定作業の進行状況や取組み体制にも依るところがあるでしょう。

仮に、算定結果に基づき、何からどのようにCO2を削減していくか、そういったことを検討するのが主たる目的であるとすれば、まずはざっと可視化しておくというので良いのだろうと思います。ですが、自社の報告書で公表するとか、或いは、何かの認定取得のためであれば、厳密な算定が必要となるでしょう。というのも、精度の高い数値は勿論ですが、算定の過程や、算定に要したデータの取得プロセスなどを提出することが要求されることもあるからです。

従って、目的と対象範囲(たとえば海外も含めるのか、国内のある企業群だけにするのかなど)をはじめに明らかにすることが必要です。

CO2排出量算定の基本式は、CO2排出量=活動量×排出原単位です。

基本式の活動量は、対象範囲にある事業活動を把握できる量や金額といった数値を指します。排出原単位は、活動量当りのCO2排出量のことをいいます。スコープ2などでいうところのCO2排出係数のようなもので、たとえば電気であれば1kWh使用当りのCO2排出量が該当することになります。(環境省「3. サプライチェーン排出量の算定の考え方」P53)

排出原単位については、環境省・経産省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームの「排出原単位データベース」に、22年3月リリースの最新版(Ver.3.2)が掲載されています。

なお、上記の基本式は、環境省から推奨されている簡易的な算定方法です。本来は、取引先にCO2排出量を確認するのが、より正しいやり方といえます。ですが、相手方からデータを入手できない場合(取引先が自身のスコープ1と2の算定をまだ行っていないなど)があったり、また、確認作業に膨大な時間を要することもあるでしょうから、簡易な方法で排出量を推測するということになります。一般的にいえば、はじめは、簡易的な算定方法で行い、その後、特に排出量の多いカテゴリについては実測値に切り替えて、削減方法を具体的且つ精緻に検討していくというながれが、望ましいといえるでしょう。

カテゴリ1の購入した製品・サービスの場合、基本式の活動量×排出原単位における活動量の算定には、2とおりの方法があります。一方は調達量をベースに、他方は金額をベースに算出するというもので、より正確な排出量算定には、調達量(重量)が適しています。

カテゴリ1を算定するにあたり、カテゴリ1に該当する自社(グループ企業含む)が購入した全ての製品・サービスを始めから対象にするのは、現実的ではないと思いますので、カテゴリ内での活動を特定する必要があります。

たとえば、事業会社Aにおける工場XとYで扱う主力製品Zを生産するために必要な原材料M,N,O,P,Qを、まずは対象にします。このMからQまでの5つで、製品Zの全調達量(重量)のうち、およそ80%は占めるなどの工夫が必要でしょう。(なお、この80%という数字は、「部分的な算定の許容、その閾値として80%という値をGHGプロトコルが是認していると考えられます」を参考にしています(環境省の21年改訂版のサプライチェーン排出量算定におけるよくある質問と回答集 P18. なお22年改訂版には、この文言は見当たりません)。

続きは次回のブログへまわしたいと思います。


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