5/13/2022

脱炭素経営の取組み (3)Scope1③

スコープ1の各種省エネ施策には大きな効果が見込めるものもありますが、カーボンフリーを目指すゴールを前提にすれば、やはり小さい感は否めません。ネットゼロに向けては、不確定要素が多少あっても、技術動向から目を離すことはできません。スコープ2の場合、CO2排出量削減の方法は前述のとおり4つに絞られるため、大きな効果を創出しようとすれば、需要家各社がとる方向(4つの選択肢のどれを採用するかなど)は自ずと明確にすることができます。一方で、スコープ1については、現行技術をそのまま適用することでは、そう大きな効果を得るのは難しい。

そこで、電気の一次エネルギー化という考え方がでてきます。一次エネルギーとは、石油、石炭、天然ガスといった化石燃料、天然ウランなどの鉱物燃料、太陽光や風力などの再生可能エネルギーのことを指します。二次エネルギーは、一次エネルギーから変換加工して得られたエネルギーを表し、発電や精製といった加工を経た電気、ガス、ガソリンなどが該当します。この二次エネルギーを、需要家が消費すると、最終エネルギー消費と呼ばれます。なお、省エネはこの段階の使用量を減らしたり、使用料金を抑える活動のことを指すのが一般的で、実際、この段階のものを指標として用います。つまり、需要家が一次エネルギー化した電気を使うことで、始めからCO2をゼロにすることができるということになります。

大幅なCO2削減を目指す観点からすれば、需要場所で燃焼させている化石燃料を削減することに、まず手をつけなければいけないという指摘があります。というのも、日本の最終エネルギー消費のうち、電気が占める割合は20%程度に過ぎず、残り大半は何らかの化石燃料が占めているというデータがあるからです(資源エネルギー庁のR2エネルギー需給実績の速報値)。

長期的には、スコープ2で調達する電力を再エネを主力とし(電力供給サイドの視点では、電源の低炭素化を推進し)、スコープ1の需要サイドでは電化技術への置換を推し進めることが、より効果的に且つ圧倒的にCO2を削減する上で、必要不可欠なことになります。

開発技術そのものや、その商用化の問題などがあってそう簡単にはいきませんが、カーボンフリーに向け、スコープ1では、電化水素、アンモニア、メタネーションといった技術に大きな期待が寄せられています。これらはいずれも、化石燃料フリーの一次エネルギーから作られる電気、再生可能エネルギーを利用した技術になります。

ここでいう電化とは、再エネを利用して熱需要に対応する電化設備を導入し、直接的に化石燃料の消費を削減することを指します。たとえば、生産工程における加熱、蒸気、温水ボイラー、または工業炉といった熱需要が対象になります。但し、対応できる熱領域には技術的に制限がある上、受電設備の増強も必要になることなどから、電化の限界も指摘されてはいます。

とはいえ、技術開発が大きく進展し、投資額が劇的に下がることもありうるでしょうから、考える対策は、選択肢をあまり狭めることなく、適時継続して見直すといったことが重要になるといえます。

最後になりましたが、スコープ1のCO2排出量算定方法については、業種によって多岐にわたります。詳細は、以下のガイドラインをご参照ください。 環境省「温室効果ガス総排出量算定方法ガイドライン」 

次回の「脱炭素経営の取組み」ブログでは、Scope3を取り上げたいと思います。


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