11/25/2025

ブランディング (7)マーケティングミックス④ プレイスその2

プレイスの2回めで、前回(プレイスその1)同様、チャネルに絞って進めます

前回で述べたとおり、チャネル戦略を考える時に重要なことは、ターゲット市場セグメントの需要の特徴を把握することです。

買い手が一般消費者の場合であれば、その需要の規模や大きさ、たとえばそれは地理的に分散しているのか、一定の地域に集中しているのかといったことなどを考えていかなければなりません。仮に、一般消費者が地理的に広く分散しているのであれば、リアルでいえば卸売企業、ネットであればアマゾンのような総合的な品揃えをしている小売企業のようなチャネルパートナーを活用することが前提になるでしょう。

ターゲット市場セグメントの需要の規模や特徴が掴めたら、次はそのセグメントに属する顧客は、自社のプロダクトをどのように購入/利用したいと思っているのかをおさえなければなりません。

たとえば、その顧客は幅広い品揃えを有する小売業態たとえば百貨店のようなところで、販売員と会話し、他社商品と比較検討しながら、購入したいと思っているのか。或いは、価格重視で、比較検討はさほどせずに、買物に費やす時間や手間をできる限り省きたいと思っているのか。この2つだけでも、購買行動は随分と異なります。

また、当該小売企業が立地する地域でも違いはあります。SMB(Small and Medium-sized Business/中小規模のビジネス)でよくあるパターンとして、地元での消費もほどほどにして(十分刈り取ることなく)、いきなり首都圏に進出しようとする企業が少なくありません。多くのケースにおいて、大規模市場にはたくさんの競争相手が存在し、また消費行動の変化もかなり激しいものがあります。そういった市場で、そもそも自社商品を目立たせ、購入/利用してもらい、リピート顧客を掴むといったことは、簡単ではありません。実際、自社商品が全体の中で埋没してしまい、1日にひとつも売れなかったというのは、そう珍しいことではないからです。

さらに、自社が希望する立地に店を構える小売企業が売上げを増やしたいために、値下げ販売を度々奨励するといったこともありえます。こういう場合には、そもそも自社の考え方、商品戦略やプライシングポリシーにまったくそぐわない可能性さえあるため、事前に確認しておくことが重要になります。

あと、選定したチャネルに対する商品供給に必要なコストは、どれくらいかかるのかということも検討しなければなりません。当たり前のことですが、自社が獲得できるであろう市場規模が経済的にかなり魅力あるものであれば、自ら進出することもありえるでしょうが、そうでない場合は、適切なチャネル仲介業者を活用して進出すべきです。ただ、チャネル仲介業者たとえば卸売企業の場合は、扱い品目が膨大な数になり、自社が売り込みたい商品は、当該卸売企業にとって多くの中の一つに過ぎません。そのため、積極的に売ってもらいたければ、それなりの販促金や、場合によっては卸売企業に対する投資的な活動といったような出費も必要になるでしょう。


チャネルとは、自社のプロダクトを買い手まで流通させる手段です。チャネルを介して、買い手に自社のブランドをしっかりと認知してもらい、ブランドのイメージを向上させるためのものでなければなりません。そのために、チャネルをどう活用し、管理していくかということです。

ケビン・レーン・ケラーは、ダイレクト・チャネル(郵便、電話、デジタル媒体、訪問、自社が単体で運営するリアルまたはネットの店舗)は、プロダクトの幅と深さ、プロダクトの多様性や、プロダクトの個性、明快な特性といったものを、買い手に十分認識してもらうことで、そのブランドエクイティを高めることができると述べています。

イン・ダイレクト・チャネル(卸売/流通企業、代理店、仲買人、自社が運営していない小売企業など)の場合は、小売業を含めた仲介企業による活動と支援、及び仲介企業が所有しているイメージや連想を、自社ブランドに移転することで、ブランドエクイティに良い影響を与えることができるとしています。

このように、チャネル戦略は自社が確立したい(またはもっと強固なものにしたい)ブランドイメージと、イン・ダイレクトの場合であれば小売企業のようなパートナー企業のイメージを最大限うまく組み合わせて、二次的ともいえるブランドイメージや連想を作り上げることが必要であることがわかります。そうするためには、チャネルの検討は、もっと慎重に、より幅広い選択肢から検討することが重要になるといえます。


11/17/2025

ブランディング (7)マーケティングミックス④ プレイスその1

前回まではマーケティングミックスの価格について論じてきました。(参考: ブランディング(7)マーケティングミックス③価格24(プライシングまとめ①)価格25(プライシングまとめ②))

今回は、3つめのPのプレイス(Place)についてです。

フィリップ・コトラーとケビン・レーン・ケラーは、プレイスの変数には、チャネル、流通範囲、品揃え、立地、在庫、輸送があるといっていますが、今回のこのブログでは、チャネルに絞って述べていきたいと思います。


消費者にとって、プロダクトを購入/利用するためのチャネルは増え続けています。リアルの店舗か、ネットか、(ダイレクトマーケティングなどの)メールか郵便か電話か、テレビなどの通販、或いは訪問か等々、多数の選択肢があります

プロダクトの提供側でも、自社が直接行うのか、或いは卸売/流通企業を通すのか、代理店や仲買人などの中間業者を活用して販売するのかといったことを検討しなければなりません。ただ、どのチャネルを選択しようとも、基本的に共通していえることは、プロダクトコンセプトに合致したチャネルを選定することと、そのチャネル(リアル店舗か、ネットか、カタログかなど)をマネジメントすることが必要であるということです。

ここで基本的としているのは、一部の食品や日用雑貨品、特にバス・トイレタリー用品のようなカテゴリーに属するいわゆるコモディティ化が大きく進んだ商品の場合は、チャネル選択を厳密に行うことなく、流通のカバー率を向上させる施策、差別流通的なやり方で商品を販売してきたメーカーや卸が一定数存在してきたからです。今日では限定的な選択流通が増えてはいますが、無差別流通がなくなるわけではありません(また、なくす必要もないでしょう)。こういった理由から、基本的にとしています。


ところで、プロダクトコンセプトに合致したチャネルというのは、マーケティングミックスの観点でいえば、消費者とどういうコミュニケーションをしたいのかということに行き着きます。つまり、プロダクトコンセプトに基づいて設定したターゲットオーディエンスは、どういうメディアで、どのような行動をしているかを推定した上で、コミュニケーションメディアを選択するということです。この観点からすれば、マーケティングミックスにおける意思決定では、プロダクトからプライスへ進み、次はプレイスではなく、プロモーションを考えてから、そのプロモーションを実現するにふさわしいプレイスは何処かを決めるほうがより適しているともいえるかもしれません。


チャネルは、チャネルごとに提供する価値が異なります。リアル店舗であれば業態(売り方)の選択がある上、出店エリアも決めなければなりません。今日では、1種類のチャネルしか持たない企業は少なくなりました。市場で存在感を発揮するために、どのチャネルを活用するかは慎重に検討しなければなりません。1つのチャネルだけというのも問題ですが、多すぎると管理に手間取るばかりか、チャネル同士の対立が生まれる可能性があります。コンフリクトが発生すると、エンドユーザーのイメージ悪化が起こり、ブランドを存続・強化させていくことが困難になることも想定できます。

また、選択したチャネルによっては、プロダクトの価格帯を調整する必要があります。たとえば、飲料やアルコール類、特にビールなどは、同一商品であっても通常の販売価格が、小売業態によって30%以上の違いがあることが珍しくありません。さらに同じ業態であっても、食品スーパーやGMSの場合であれば、多くが商品をハイ&ローで提供していますが、食品スーパーのオーケーや、GMSの西友、また業務用スーパーなどはEDLPで商品を提供しています。(EDLPについてはこちらをご覧ください→ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その14)

このように顧客接点を持つ小売企業でやり方(ハイ&ローかEDLP)が異なる場合、仮にメーカーが商品を時々大幅値引きで販売していれば、ハイ&ロー型の小売企業では問題がなくても、EDLPの方では、同様の展開はできません。したがって、メーカーは自社ブランドの価値を高められるチャネルを慎重に選択するのは勿論のこと、選択したチャネルに対して支援を継続して行う必要が生まれるということになります。


大手企業であれば、経営資源も豊富にあり、いろいろなやり方を試すこともできますが、中小・零細企業(以下「SMB」、Small and Medium-sized Busines)であればそんな余裕はないでしょう。SMBであれば、優れたプロダクトの企画と提供を実現できるニッチ市場に特化できるチャネルを選択したり、買い手ごとにきめ細かい対応ができるようなチャネルにフォーカスするほうが賢明です。

まずはひとつの領域に焦点を絞り、そこで突出する(いわば消費者からみて目立つ)ことをしなければなりません。但し、選択したチャネルでフォーカスするのは、プロダクトそのものではなく、差別化につながる顧客へのベネフィットであることを忘れてはなりません。

このチャネル選択で最も重要なことは、当該プロダクトの潜在顧客がどこにいるかを見極めることです。そして、どういったやり方でその潜在顧客に、自社のプロダクトを知ってもらうかということに尽きるといえるでしょう。

ブランドの観点でいえば、選択するチャネルが自社のブランド戦略に合致していなければなりません。自社ブランドが果たす約束を、当該チャネルで実行できるかどうかが、ブランドには問われます。このように考えると、基本的には卸売企業や仲介業者に一任するというのはありえないでしょう。

B2CのSMBであれば、チャネルが提供している価値やイメージを消費者がどのように見ているのか、そのチャネルの中で自社プロダクトの役割はどうあるべきかを、必ずおさえておかなければなりません。

続きは次回といたします。


11/06/2025

ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その25

以下はプライシングの5原則です。

1. 価格は、コストプラス法にみられるような生産コスト上乗せ方式ではなく、プロダクトが買い手に提供する価値に基づいて設定する必要がある。

2. 価格は、買い手がプロダクトに見出す価値の相違によって、カスタマイズすべきである。

3. 価格は、買い手の心理(特に参照価格とその変化)を考察して設定する必要がある。

4. 価格は、買い手の価格心理の理解に加えて、競合他社がどのような長期目標と戦略を立てているかを慎重に分析し、且つ自社の動きに対して、競合がどのように反応するかを見極めて設定する必要がある。 

5. 上記4つを実践するためには、はじめに自社プロダクトの市場におけるポジショニングを明確にして、自社の目標と整合性のある価格を設定しなければならない。


前回(価格その24)は、プライシングの原則1から3までを述べました。今回は、原則4と5についてです。ここまでのブランディング(7)マーケティングミックス③価格については、以下のリンクからご覧ください。

 価格その1(価格の多様性)その2(価格検討3つのレベル)その3(プロダクトレベルでの検討)その4(先発企業の価格戦略①)その5(先発企業の価格戦略②)その6(先発企業の価格戦略③と後発企業の価格戦略)その7(経営の意志)その8(ライフサイクル①)その9(ライフサイクル②)

その10(消費者の価格概念)その11(内的参照価格①)その12(内的参照価格②)その13(バリュープライシング)その14(EDLP)その15(価格の測定尺度)その16(プライス・カスタマイゼーション①)その17(プライス・カスタマイゼーション②)その18(プライス・カスタマイゼーション③)

その19(プライシングのセグメント①)その20(プライシングのセグメント②)その21(プライシングのセグメント③)その22(新商品のプライシング①)その23(新商品のプライシング②)その24(プライシングまとめ①)


原則4は、「 価格は、買い手の価格心理の理解に加えて、競合他社がどのような長期目標と戦略を立てているかを慎重に分析し、且つ自社の動きに対して、競合がどのように反応するかを見極めて設定する必要がある」です。

ここでは、競合企業の数と競合企業間の差異に着目します。通常、競合企業の数が多ければ競争は激化します。ただ、数が多くても、たとえば建設業界のようなスーパーゼネコン5社のように、各社1兆円以上の売上げがあり、大規模プロジェクトの多くを請け負い、5次くらいまでの系列があるような場合には、実態として最適価格での契約がどうしても難しくなることがあります。談合とまではいかなくても、暗黙のうちに価格設定の面で協調し合うような関係が生まれます。

このようなケースを考慮すれば、つまり競合企業間の差異については、コスト構造、市場シェア、プロダクト構成、技術基盤の相違が大きければ、競争は激しさを増す傾向が高まるということがいえるでしょう。


次に、価格を下げることで短期的利益をどれくらい上げられるかを考えるべきです。当然のことながら、大きな短期的利益が見込める場合は、価格競争が起こる可能性が高まります。実際、囚人のジレンマにあるとおり、価格競争は簡単に生まれることに注意しなければなりません。

また、売上げやシェアを伸ばすことを目的としたもの以外にも、たとえば過剰生産によって在庫がだぶついていたり、プロダクトどうしが似通っていてどちらか片方に買い手をシフトさせる必要があれば、価格の引き下げは起こります。ケースはいろいろありますが、いずれにせよ競争の観点から、業界全体の価格水準を考えることが重要です(ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その2)


競合他社の動きを予測するためには、他社プロダクトの戦略上の目的を理解しなければなりません。とりわけ当該プロダクトの将来における重要性をおしはかって、売上げやシェアにどれくらい拘っているのかを見極めることが重要です。この時、競合のコスト構造と財務上の強さを推定して、どれくらいまでなら価格を引き下げることが可能なのかを掴むことです。

ピーター・ドイル(イギリスのウォーリック・ビジネススクール元教授)は、以下のようにして、競合他社の価値を評価することを薦めています。

①フォーカスグループによるプロダクトの属性を把握し、品質を多角的に評価するための要素(次元)を明確にする。

②品質の次元を重みづけし、顧客が最も重視する属性を決める。

③属性に基づき競合他社を評価する。特に最も重視している属性について、顧客が競合他社のオファーをどう評価しているかを調査する。

④望ましい価格と品質の組み合わせを顧客にランクづけしてもらい、その選好にしたがって顧客をセグメントする。

つまり、顧客は最高の知覚価値を提供してくれるプロダクトを選ぶということを前提に、顧客が知覚するプロダクトの品質を高めるか、価格を引き下げるかということになります。但し調査をする時には、あらゆる市場がセグメント化されている状況下であっても、全ての買い手が同じ価値の組み合わせを望んでいるわけではないため、特定のセグメントごとに価値を設定しなければならないと、ドイルは注意を促しています。

企業の先発後発の価格戦略については、テリスの9つの価格戦略(価格その4価格その5価格その6)で、プロダクトのライフサイクルステージについては価格その8価格その9で詳説しています。



原則5は、「 上記4つ(原則1から原則4まで)を実践するためには、はじめに自社プロダクトの市場におけるポジショニングを明確にして、自社の目標と整合性のある価格を設定しなければならない」です。

つまり、価格設定は、自社が望む市場でのポジション→価格→コスト→設計開発というながれであるべきで、従来からの多くのながれ(上記のながれの逆)であってはならないということです(ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その7)。

ポジショニングを明確にして、目標と整合性のある価格を設定することは、そう簡単にはいかないこともあるでしょう。というのも、プライシングが組織間の対立を招くことが珍しくないからです(そもそもマーケティングや新商品開発自体が、自社内各組織間のコンフリクトを生みやすい活動です)。

商品企画/マーケティング、研究開発、生産、営業、財務、経営/事業企画、物流などが目指す方向や機能の違いによって、プライシングは直接的な影響を被ります。とりわけ商品回転率の高い一般消費財メーカーにおいて一時的な値下げを行う場合などは、生産や物流に過度な負担を強いることが珍しくなく、半ば恒常的に感情面の対立に発展することがあります。


プライシングは小手先のテクニックでは乗り切れません。包括的、全体俯瞰的なアプローチが必要であり、プライシングに責任を負うマネージャーを配置することに留まることなく、経営の意思統一とリーダーシップによって進められるべきです。

効果的なプライシングを行っていくためには、関係各部署とそこで働く従業員に対して、プライシングの目的とメリットなどを明示し、教育をとおした周知徹底が何より重要です。

そのためには、プライシングについて的確な意思決定が行えるよう、中核となるタスクを定義し、プライシングプロセス特にプライシング計画立案のプロセスを標準化させることがまず必要でしょう。併せて、各部署と密に連携するプライシングチームを配置し、プライシングの最高責任者を導入することも、取組みの効果を大きくすることになるはずです。

こういった一連の取組みでは、トップマネジメントのコミットメントを確保することが不可欠です。局所的、部分最適に終わらず、部門横断的または部門を超えて、包括的、全体最適な意思決定が必要になるからです。また、納入先や顧客からの圧力に屈しないためにも、トップのコミットメントは避けてとおれません。


プライシングは、単なるマーケティングミックスの一要素として捉えるのではなく、ブランドのコンセプトそのものであり、ブランドを構築するうえで、極めて重要な方策であることを再認識することが重要です。何故なら、プライシングこそが、企業の利益と売上げにすぐさま直結するものだからです。


次回からは、マーケティングミックス3つめのPのプロモーションについてです。


11/01/2025

ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その24

マーケティングミックス2番めのPの価格について、半年間、論じてきました。その内容を簡潔に要約すると、次の5つの原則に集約されます。


1. 価格は、コストプラス法にみられるような生産コスト上乗せ方式ではなく、プロダクトが買い手に提供する価値に基づいて設定する必要がある。


2. 価格は、買い手がプロダクトに見出す価値の相違によって、カスタマイズすべきである。


3. 価格は、買い手の心理(特に参照価格とその変化)を考察して設定する必要がある。


4. 価格は、買い手の価格心理の理解に加えて、競合他社がどのような長期目標と戦略を立てているかを慎重に分析し、且つ自社の動きに対して、競合がどのように反応するかを見極めて設定する必要がある。


5. 上記4つを実践するためには、はじめに自社プロダクトの市場におけるポジショニングを明確にして、自社の目標と整合性のある価格を設定しなければならない。


マーケティングミックスで、収益を直接生み出すのは、2つめのPである価格だけで、それ以外は全てコストといえます。

価格以外のマーケティングミックスの変化、つまりプロダクト・プレイス・プロモーションの中身を変えることによる利益と売上げへの影響、特に短期的なインパクトについては、価格の変更による影響よりも、はるかに小さなものです。価格の変更・調整は、プレイスやプロモーションにおける方針転換、プロダクトの新規開発・導入よりも、ずっと短い期間で実行できるのは明らかです。


市場は複雑化しています。社会のデジタル化と共に、販路は多様化し、市場のセグメント化は一段と進行しています。ひとつのタイプやブランドだけを提供して事足りるという時代は終わっています。企業は製品やブランドの組み合わせ、それらの相互依存性を考慮して価格を設定しなければ、もはや競争に勝ち抜くことはできません。グローバル競争であれば尚更であることから、プライシングの重要性はかつてないほど大きなものになっているといえるでしょう。


上記原則1については、買い手がプロダクトに対して支払ってもよいと考える価格、つまり買い手が得られる価値で、プロダクトの価格は決めなければならないということを表しています。というのも、通常買い手は、ある商品がほかのものと大差ないと感じた場合、安いほうを購入(または利用)するのが普通です。そのため、ほかとの差異を感じられる価値が重要になります。


買い手は、プロダクト特性の違いから生じるベネフィットを理解することで、満足感をおぼえます。経済性は無視しえないものですが、B2Bの場合は、経済的価値に加え、機能的価値を重視する傾向が一般的です。B2Cの場合は、経済性の次に、情緒的価値または自己表現的価値が、今日ますます重要になっています(ブランディング (3)セグメンテーション ②消費者市場R&Dと組織横断型活動 (1)はじめに③)。

このことから、価格がコストを決定するのであって、コストが価格を決めるものではないということがわかります(ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その7)。なお、価格の測定については、 価格その13価格その15をご覧ください。



原則2の価格カスタマイズ(プライス・カスタマイゼーション)は、非常に重要な考え方です。というのも、プロダクトの購入/利用に対して、買い手を取巻く環境や、態度・嗜好は様々であるため、必然として買い手がプロダクトに見出す価値も異なります。買い手のセグメントが違えば、プロダクトを同一価格で提供するよりも、違いのある分だけ異なる価格で提供するほうが効果的であるのは明白です。

また、プロダクトを全ての市場に対して同一価格で提供することは、全ての市場を同質的なものと捉えているともいえ、買い手や、サプライヤーなどの協力企業、従業員や経営者、株主に対して、価値創造の機会を逸していることにもなるといえるでしょう。

このように非常に重要なプライス・カスタマイゼーションについては、主に、ブランディング (7)マーケティングミックス③ 価格その16価格その17価格その18で、また、価格その19価格その20価格その21で詳説しています。



原則3の買い手の価格心理、特に参照価格とその変化を考察することは、マーケティング/ブランディング活動の成否を左右すると言っても過言ではありません。効果的なマーケティング/ブランディング活動を計画し実行するためには、買い手の購買心理(広くは購買行動)の理解が欠かせません。とりわけ一般消費者を対象にするB2Cの場合では尚更です。

参照価格を中心とした買い手の価格心理については、ブランディング (7)マーケティングミックス③価格その10 価格その11 価格その12で述べています。


原則4と5については、長くなるため次回にしたいと思います。





ブランディング (7)マーケティングミックス④ プレイスその5

前回(プレイスその4) の続きで、今回もチャネルを中心とした産業構造のレイヤー化についてです。はじめに、あらためてレイヤー構造化の定義をしておきたいと思います。 レイヤーとは、層や階層を表す言葉です。 ビジネスにおけるレイヤー構造とは、 ビジネスの要素である データや情報、プロダ...