前回(プロモーションその4)は、マーケティングコミュニケーションのマクロモデルと、知覚の3タイプ(選択的注意、選択的歪曲、選択的記憶)について述べました。知覚は消費者心理のひとつですが、ほかに、動機、学習、記憶があります。マーケティングプロモーションにおけるコミュニケーションの開発とそのながれについて検討していく前に、はじめに消費者心理について、簡単に触れておきたいと思います。
消費者心理のながれは、最初が「動機」、次に「知覚」、その後に「学習」、最後が「記憶」です。動機は、人が持つ数あるニーズの中で、実際の行動を起こすレベルに達したものを指します。学習は、知識の習得など、様々な経験をとおして、行動が変化する過程のことをいいます。記憶は、脳に蓄積された過去の経験や情報を思い出すことです。消費者心理のながれをとおして、人は行動や学習によって、信念や態度を形成していくことがわかります。このように、消費者の行動というのは、多くのこと(4つの消費者心理と、文化的・社会的・個人的な消費者特性)から影響を受けることになります。
それではここから、人がプロダクトを購入しようとする時、どのようにして決定するのかを見ていきます。
購買者の意思決定プロセスには、一般的にいえば5つの段階があるといわれています。「問題認識(または、ニーズ認識)」→「情報探索」→「代替品の評価」→「購買決定」→「購買後の行動」です。
但し全ての消費者が、プロダクト購入時に、必ずこのながれに従うというわけではありません。たとえば、いつもこだわって買っているポン酢があるとすれば、その場合は問題認識から一気に購買決定へと進むでしょう。ただ通常、この5段階はプロダクトに対して高い関与を持つ場合の全ての動きをおさえていると言われています。
購買プロセスは、問題やニーズを認識した時が起点となります。この時点で、消費者は、自分のおかれている状況と、望んでいる状況との違いを感じるということになります。なおこの「問題認識」には、空腹や眠気といったような自身の内的刺激と、人によりますが、たとえば映画を観て俳優が着こなすコートが欲しくなったり、知人が乗っているスポーツカーを羨ましいと感じたりするといった外的刺激の2種類があるとされています。
内的と外的に違いはありますが、どちらも問題認識が購買意欲を喚起するきっかけになる点で共通しています。この段階では、マーケティング/ブランド担当者は、どういう問題やニーズが起こっているのか、それらが生まれた背景にはどういったものがあるのかということを、仮説をもって調査を行い、明らかにする必要があります。こういう調査をとおして(仮説を検証する調査を行うことで)、自社プロダクトの購買/利用に対する消費者の動機を高められるマーケティング戦略を展開できるようになります。
2番めの「情報探索」では、問題やニーズを感じた消費者が、自ら情報を集める段階です。問題があっても、探索を一切しない人もいるでしょうが、ここでは通常、人は問題解決に向けたアクションである情報探索を行うことを前提として進めます。コトラーとケラーは、消費者の情報源には、個人的情報源、商業的情報源、公共的情報源、経験的情報源という4つに分類されると言っています。
以前は、マーケティング/ブランド担当者がコントロールできるものは商業的情報源であり、消費者の情報探索として最も効果的なものが家族、友人、隣人などの個人的情報源であると言われていました。今日、この個人的情報源に、見ず知らずの人のネット上の口コミを含めるとすれば、それは20世紀の個人的情報源とは、まったく質が異なるものになったといえるでしょう。
口コミを十羽一絡げに捉えるのはよくないにしても、それでも商業的な側面を否定することはできず、仮に口コミを商業的情報源に加えるとすれば、広告、ウェブサイト、販売員、ディスプレイなどを含めた商業的情報源が、現在では最も大きな情報源になるといえるでしょう。そう考えると、自社がターゲットにする消費者が重視する情報源が何で、何故それを重視しているのかを、予め把握しておくことが欠かせません。
3番めの「代替品の評価」は、消費者が情報を探索して選択した幾つかのプロダクトを評価する段階です。ここでのマーケティング/ブランド担当者にとっての問題は、評価の仕方は消費者ごとに異なることと、同じ消費者であってもプロダクトによって評価の仕方が変わってくるということです。そこで、我々が最低限気をつけなければならないことは、消費者の問題認識またはニーズ(購買者の意思決定プロセスの一番最初の段階)が、そもそもどういったものなのかを把握しておくことが不可欠であるということになります。
つまり、プロダクトの属性の一つまたはそれ以上の集まりがベネフィットを提供するという考え方に基づけば、どういったベネフィットを備えているプロダクトが評価対象になっているのかを、我々は調査しなければならないということになります。
ただ、ここで網羅的に属性やベネフィットを調べるというのは、あまり現実的とはいえないでしょう。というのも、消費者の多くはそもそも移り気です。仮にあれこれ考えたとしても、賢明な人は、結局、最も強い問題認識(またはニーズ)を解決しようとして、ひとつ(くらいのもの)に集中して評価する傾向があると、筆者は考えるからです。実際、多くの属性やベネフィットを訴求できたとしても、消費者に記憶されることは難しいからです。(属性とベネフィットについては、ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法v a-b-eモデルその1、ブランディング (3)セグメンテーション ②消費者市場、ブランディング (5)ポジショニング ⑤3段階手法iii I-D-Uモデルその1)
次回は、「購買決定」から始めたいと思います。